マダム・マクシームにばかり気を取られていたハリーは、十数人もの男女学生が――顔つきからすると、みんな十七、八歳以上に見えたが――馬車から現れて、マダム・マクシームの背はい後ごに立っているのに初めて気づいた。みんな震ふるえている。無理もない。着ているローブは薄うす物ものの絹きぬのようで、マントを着ている者は一人もいない。何人かはスカーフをかぶったりショールを巻いたりしていた。顔はほんのわずかしか見えなかったが(みんな、マダム・マクシームの巨大な影の中に立っていたので)、ハリーは、みんなが不安そうな表情でホグワーツを見つめているのを見て取った。
「カルカロフはまだきーませんか?」マダム・マクシームが聞いた。
「もうすぐ来るじゃろう」ダンブルドアが答えた。
「外でお待ちになってお出迎えなさるかな? それとも城中に入られて、ちと、暖だんを取られますかな?」
「あたたまりたーいです。でも、ウーマは――」
「こちらの『魔ま法ほう生せい物ぶつ飼し育いく学がく』の先生が喜んでお世話するじゃろう」ダンブルドアが言った。
「別の、あー――仕事で、少し面倒があってのう。片づきしだいすぐに」
「スクリュートだ」ロンがニヤッとしてハリーに囁ささやいた。
「わたーしのウーマたちのせわは――あー――ちからいりまーす」
マダム・マクシームはホグワーツの「魔法生物飼育学」の先生にそんな仕事ができるかどうか疑っているような顔だった。
「ウーマたちは、とてもつよーいです……」
「ハグリッドなら大丈夫。やり遂とげましょう。わしが請うけ合あいますぞ」ダンブルドアが微ほほ笑えんだ。
「それはどーも」マダム・マクシームは軽く頭を下げた。
「どうぞ、そのアハグリッドに、ウーマはシングルモルト・ウィスキーしかのまなーいと、おつたえくーださいますか?」
「畏かしこまりました」ダンブルドアもお辞じ儀ぎした。
「おいで」
マダム・マクシームは威い厳げんたっぷりに生徒を呼んだ。ホグワーツ生の列が割れ、マダムと生徒が石段を上れるよう、道を空あけた。