「ダームストラングの馬はどのくらい大きいと思う?」
シェーマス・フィネガンが、ラベンダーとパーバティの向こうから、ハリーとロンのほうに身を乗り出して話しかけた。
「うーん、こっちの馬より大きいんなら、ハグリッドでも扱えないだろうな」ハリーが言った。「それも、ハグリッドがスクリュートに襲おそわれていなかったらの話だけど。いったい何が起こったんだろう?」
「もしかして、スクリュートが逃げたかも」ロンはそうだといいのに、という言い方だ。
「ああ、そんなこと言わないで」ハーマイオニーが身み震ぶるいした。「あんな連中が校庭にウジャウジャしてたら……」
ダームストラング一いっ行こうを待ちながら、みんな少し震ふるえて立っていた。生徒の多くは、期待を込めて空を見つめていた。数分間、静寂せいじゃくを破るのはマダム・マクシームの巨大な馬の鼻息と、地を蹴ける蹄ひずめの音だけだった。だが――。
「何か聞こえないか?」突然ロンが言った。
ハリーは耳を澄すませた。闇やみの中からこちらに向かって、大きな、言いようのない不気味な音が伝わってきた。まるで巨大な掃そう除じ機きが川底を浚さらうような、くぐもったゴロゴロという音、吸い込む音……。
「湖だ!」リー・ジョーダンが指差して叫さけんだ。「湖を見ろよ!」
そこは、芝しば生ふのいちばん上で、校庭を見下ろす位置だったので、湖の黒く滑なめらかな水みな面もがはっきり見えた――その水面が、突然乱れた。中心の深いところで何かがざわめいている。ボコボコと大きな泡あぶくが表面に湧わき出し、波が岸の泥を洗った――そして、湖の真まん中が渦うず巻まいた。まるで湖底の巨大な栓せんが抜かれたかのように……。
渦の中心から、長い、黒い竿さおのようなものが、ゆっくりと迫せり上がってきた……そして、ハリーの目に、帆ほ桁げたが……。
「あれは帆ほ柱ばしらだ!」ハリーがロンとハーマイオニーに向かって言った。