ここでダンブルドアは杖つえを取り出し、木箱の蓋ふたを三度軽く叩たたいた。蓋は軋きしみながらゆっくりと開いた。ダンブルドアは手を差し入れ、中から大きな荒あら削けずりの木のゴブレットを取り出した。一見まるで見み栄ばえのしない杯さかずきだったが、ただ、その縁ふちから溢あふれんばかりに青白い炎が踊おどっていた。ダンブルドアは木箱の蓋を閉め、その上にそっとゴブレットを置き、大広間の全員によく見えるようにした。
「代表選手に名乗りを上げたい者は、羊よう皮ひ紙しに名前と所しょ属ぞく校こう名めいをはっきりと書き、このゴブレットの中に入れなければならぬ。立りっ候こう補ほの志こころざしある者は、これから二十四時間の内に、その名を提出するよう。明日、ハロウィーンの夜に、ゴブレットは、各校を代表するにもっともふさわしいと判断した三人の名前を返してよこすであろう。このゴブレットは、今夜、玄げん関かんホールに置かれる。我と思わん者は、自由に近づくがよい」
「年ねん齢れいに満たない生徒が誘ゆう惑わくに駆かられることのないよう」ダンブルドアが続けた。「『炎のゴブレット』が玄関ホールに置かれたなら、その周囲にわしが『年齢線』を引くことにする。十七歳に満たない者は、何なん人ぴともその線を越えることはできぬ」
「最後に、この試合で競おうとする者にはっきり言うておこう。軽々しく名乗りを上げぬことじゃ。『炎のゴブレット』がいったん代表選手と選んだ者は、最後まで試合を戦い抜く義ぎ務むがある。ゴブレットに名前を入れるということは、魔法契けい約やくによって拘こう束そくされることじゃ。代表選手になったからには、途と中ちゅうで気が変わるということは許されぬ。じゃから、心しん底そこ、競技する用意があるのかどうか確信を持った上で、ゴブレットに名前を入れるのじゃぞ――」
「――さて、もう寝る時間じゃ。皆、おやすみ」