背はい後ごでガタガタと大きな音がして、ハーマイオニーがS・P・E・Wバッジの箱を持って戻ってきたことがわかった。
「おっ、いいぞ。急ごう」ロンが石段を飛び降りた。その目は、マダム・マクシームと一いっ緒しょに芝しば生ふの中ほどを歩いているヴィーラ美少女の背中に、ぴったりと張はりついていた。
禁じられた森の端はたにあるハグリッドの小屋に近づいたとき、ボーバトン生がどこに泊まっているかの謎なぞが解けた。乗ってきた巨大なパステル・ブルーの馬車が、ハグリッドの小屋の入口から二百メートルほど向こうに置かれ、生徒たちはその中へと登っていくところだった。馬車を引いてきた象ほどもある天馬は、いまは、その脇わきに設しつらえられた急ごしらえのパドックで、草を食はんでいる。
ハリーがハグリッドの戸をノックすると、すぐに、ファングの低く響ひびく吠ほえ声がした。
「よう、久しぶりだな!」ハグリッドが勢いよくドアを開け、ハリーたちを見つけて言った。「俺おれの住んどるところを忘れっちまったかと思ったぞ!」
「私たち、とっても忙いそがしかったのよ、ハグ――」ハーマイオニーは、そう言いかけて、ハグリッドを見上げたとたん、ぴたっと口を閉じた。言葉を失ったようだった。
ハグリッドは、一いっ張ちょう羅らの(しかも、悪あく趣しゅ味みの)毛がモコモコの茶色い背せ広びろを着込み、これでもかとばかり、黄色とだいだい色の格こう子し縞じまネクタイを締めていた。極きわめつきは、髪かみをなんとか撫なでつけようとしたらしく、車しゃ軸じく用ようのグリースかと思われる油をこってりと塗ぬりたくっていたことだ。髪はいまや、二ふた束たばにくくられて垂たれ下がっている――たぶん、ビルと同じようなポニーテールにしようとしたのだろうが、髪が多すぎて一つにまとまらなかったのだろう。どう見てもハグリッドには似合わなかった。一瞬いっしゅん、ハーマイオニーは目を白黒させてハグリッドを見ていたが、結局何も意見を言わないことに決めたらしく、こう言った。
「えーと――スクリュートはどこ?」
「外のかぼちゃ畑の脇わきだ」ハグリッドがうれしそうに答えた。「でっかくなったぞ。もう一メートル近いな。ただな、困ったことに、お互いに殺し合いを始めてなあ」
「まあ、困ったわね」ハーマイオニーはそう言うと、ハグリッドのキテレツな髪かみ型がたをまじまじ見ていたロンが、何か言いたそうに口を開いたので、すばやく「だめよ」と目配せした。
「そうなんだ」ハグリッドは悲しそうに言った。「ンでも、大丈夫だいじょぶだ。もう別々の箱に分けたからな。まーだ、二十匹は残っちょる」
「うわ、そりゃ、おめでたい」ロンの皮ひ肉にくが、ハグリッドには通じなかった。