ハグリッドは立ち上がり、ベッド脇わきの箪たん笥すのところまで行き、何か探しはじめた。三人は気にも留めなかったが、飛びっきりひどい臭いが鼻を衝ついて初めて、ハグリッドに注目した。
「ハグリッド、それ、何?」ロンが咳せき込みながら聞いた。
「はあ?」ハグリッドが巨大な瓶びんを片手に、こちらを振り返った。「気に入らんか?」
「髭ひげ剃そりローションなの?」ハーマイオニーも喉のどが詰まったような声だ。
「あー――オー・デ・コロンだ」ハグリッドがモゴモゴ言った。赤くなっている。
「ちとやりすぎたかな」ぶっきらぼうにそう言うと「落としてくる。待っちょれ……」ハグリッドはドスドスと小屋を出ていった。窓の外にある桶おけで、ハグリッドが乱暴にゴシゴシ体を洗っているのが見えた。
「オー・デ・コロン?」ハーマイオニーが目を丸くした。「ハグリッドが?」
「それに、あの髪かみと背せ広びろは何だい?」ハリーも声を低めて言った。
「見て!」ロンが突然窓の外を指差した。
ちょうど、ハグリッドが体を起こして振り返ったところだった。さっき赤くなったのも確かだが、いまの赤さに比べれば何でもない。三人が、ハグリッドに気づかれないよう、そっと立ち上がり、窓から覗のぞくと、マダム・マクシームとボーバトン生が馬車から出てくるところだった。晩餐会に行くに違いない。ハグリッドが何と言っているかは聞こえなかったが、マダム・マクシームに話しかけているハグリッドの表情は、うっとりと目が潤うるんでいる。ハリーは、ハグリッドがそんな顔をするのをたった一度しか見たことがなかった――赤ちゃんドラゴンのノーバートを見るときの、あの顔だった。
「ハグリッドったら、あの人と一いっ緒しょにお城に行くわ!」ハーマイオニーが憤ふん慨がいした。「私たちのことを待たせているんじゃなかったの?」