「ボーバトンの代表選手は」ダンブルドアが読み上げた。「フラー・デラクール!」
「ロン、あの女ひとだ!」ハリーが叫さけんだ。
ヴィーラに似た美少女が優ゆう雅がに立ち上がり、シルバーブロンドの豊かな髪かみをサッと振って後ろに流し、レイブンクローとハッフルパフのテーブルの間を滑すべるように進んだ。
「まあ、見てよ。みんながっかりしてるわ」残されたボーバトン生のほうを顎あごで指し、騒音を縫ぬってハーマイオニーが言った。「がっかり」では言い足りない、とハリーは思った。選ばれなかった女の子が二人、ワッと泣き出し、腕に顔を埋うずめてしゃくり上げていた。
フラー・デラクールも隣の部屋に消えると、また沈ちん黙もくが訪れた。今度は興こう奮ふんで張り詰めた沈黙が、びしびしと肌はだに食い込むようだった。次はホグワーツの代表選手だ……。
そして三み度たび、「炎のゴブレット」が赤く燃えた。溢あふれるように火花が飛び散った。炎が空を舐なめて高く燃え上がり、その舌先から、ダンブルドアが三枚目の羊皮紙を取り出した。
「ホグワーツの代表選手は」ダンブルドアが読み上げた。「セドリック・ディゴリー!」
「ダメ!」ロンが大声を出したが、ハリーのほかには誰にも聞こえなかった。隣のテーブルからの大だい歓かん声せいがものすごかったのだ。ハッフルパフ生が総立ちになり、叫さけび、足を踏ふみ鳴らした。セドリックがニッコリ笑いながら、その中を通り抜け、教職員テーブルの後ろの部屋へと向かった。セドリックへの拍手があまりに長々と続いたので、ダンブルドアが再び話し出すまでにしばらく間まを置かなければならないほどだった。
「結けっ構こう、結構!」大歓声がやっと収まり、ダンブルドアがうれしそうに呼びかけた。
「さて、これで三人の代表選手が決まった。選ばれなかったボーバトン生も、ダームストラング生も含め、みんな打ち揃そろって、あらんかぎりの力を振り絞しぼり、代表選手たちを応おう援えんしてくれることと信じておる。選手に声援を送ることで、みんながほんとうの意味で貢こう献けんでき――」
ダンブルドアが突然言葉を切った。何が気を散らせたのか、誰の目にも明らかだった。
「炎ほのおのゴブレット」が再び赤く燃えはじめたのだ。火花が迸ほとばしった。空中に炎が伸び上がり、その舌先にまたしても羊よう皮ひ紙しを載のせている。
ダンブルドアが反はん射しゃ的てきに――と見えたが――長い手を伸ばし、羊皮紙を捕らえた。ダンブルドアはそれを掲かかげ、そこに書かれた名前をじっと見た。両手で持った羊皮紙を、ダンブルドアはそれからしばらく眺ながめていた。長い沈ちん黙もく――大おお広ひろ間ま中の目がダンブルドアに集まっていた。
やがてダンブルドアが咳せき払ばらいし、そして読み上げた――。
「ハリー・ポッター」