
大おお広ひろ間まのすべての目がいっせいに自分に向けられるのを感じながら、ハリーはただ座っていた。驚いたなんてものじゃない。痺しびれて感覚がない。夢を見ているに違いない。きっと聞き違いだったのだ。
誰も拍手しない。怒った蜂はちの群れのように、ワンワンという音が大広間に広がりはじめた。凍こおりついたように座ったままのハリーを、立ち上がってよく見ようとする生徒もいる。
上かみ座ざのテーブルでは、マクゴナガル先生が立ち上がり、ルード・バグマンとカルカロフ校長の後ろをさっと通り、切せっ羽ぱ詰まったように何事かダンブルドアに囁ささやいた。ダンブルドアは微かすかに眉まゆを寄せ、マクゴナガル先生のほうに体を傾け、耳を寄せていた。
ハリーはロンとハーマイオニーのほうを振り向いた。その向こうに、長いテーブルの端はしから端まで、グリフィンドール生全員が口をあんぐり開けてハリーを見つめていた。
「僕、名前を入れてない」ハリーが放心したように言った。「僕が入れてないこと、知ってるだろう」
二人も、放心したようにハリーを見つめ返した。
上座のテーブルでダンブルドア校長がマクゴナガル先生に向かって頷うなずき、体を起こした。
「ハリー・ポッター!」ダンブルドアがまた名前を呼んだ。
「ハリー! ここへ、来なさい!」
「行くのよ」ハーマイオニーが、ハリーを少し押すようにして囁いた。
ハリーは立ち上がりざま、ローブの裾すそを踏ふんでよろめいた。グリフィンドールとハッフルパフのテーブルの間を、ハリーは進んだ。とてつもなく長い道みち程のりに思えた。上座のテーブルが、全然近くならないように感じた。そして、何百という目が、まるでサーチライトのように、いっせいにハリーに注がれているのを感じていた。ワンワンという音がだんだん大きくなる。まるで一時間もたったのではないかと思われたとき、ハリーはダンブルドアの真ん前にいた。先生方の目がいっせいに自分に向けられているのを感じた。
第17章 四位勇士
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