「ポッターが、規則は破るものと決めてかかっているのを、ダンブルドアの責任にすることはない。ポッターは本校に来て以来、決められた線を越えてばかりいるのだ――」
「もうよい、セブルス」ダンブルドアがきっぱりと言った。スネイプは黙だまって引き下がったが、その目は、油っこい黒い髪かみのカーテンの奥で、毒々しく光っていた。
ダンブルドア校長は、こんどはハリーを見下ろした。ハリーはまっすぐにその目を見返し、半はん月げつメガネの奥にある目の表情を読み取ろうとした。
「ハリー、君は『炎ほのおのゴブレット』に名前を入れたのかね?」ダンブルドアが静かに聞いた。
「いいえ」ハリーが言った。全員がハリーをしっかり見つめているのを十分意識していた。スネイプは、薄うす暗くらがりの中で、「信じるものか」とばかり、イライラ低い音を立てた。
「上級生に頼んで、『炎のゴブレット』に君の名前を入れたのかね?」スネイプを無む視しして、ダンブルドア校長が尋たずねた。
「いいえ」ハリーが激はげしい口調で答えた。
「ああ、でもこのいひとは嘘うそついてまーす」マダム・マクシームが叫さけんだ。スネイプは口元に薄うすら笑いを浮かべ、こんどは首を横に振って、不信感をあからさまに示していた。
「この子が『年ねん齢れい線せん』を越えることはできなかったはずです」マクゴナガル先生がビシッと言った。「そのことについては、皆さん、異い論ろんはないと――」
「ダンブリー・ドールが『線』をまちがーえたのでしょう」マダム・マクシームが肩をすくめた。
「もちろん、それはありうることじゃ」ダンブルドアは、礼れい儀ぎ正しく答えた。
「ダンブルドア、間違いなどないことは、あなたがいちばんよくご存ぞん知じでしょう!」
マクゴナガル先生が怒ったように言った。
「まったく、バカバカしい! ハリー自身が『年齢線』を越えるはずはありません。また、上級生を説得して代わりに名を入れさせるようなことも、ハリーはしていないと、ダンブルドア校長は信じていらっしゃいます。それだけで、皆さんには十分だと存じますが!」
マクゴナガル先生は怒ったような目で、スネイプ先生をキッと見た。
「クラウチさん……バグマンさん」カルカロフの声が、へつらい声に戻った。
「おふた方は、我々の――えー――中立の審しん査さ員いんでいらっしゃる。こんなことは異い例れいだと思われますでしょうな?」
バグマンは少年のような丸顔をハンカチで拭ふき、クラウチ氏を見た。暖だん炉ろの灯あかりの輪わの外で、クラウチ氏は影の中に顔を半分隠して立っていた。何か不気味で、半分暗がりの中にある顔は年より老けて見え、ほとんど骸がい骨こつのようだった。しかし、話し出すと、いつものキビキビした声だ。
「規則に従うべきです。そして、ルールは明白です。『炎ほのおのゴブレット』から名前が出てきた者は、試合で競う義務がある」
「いやぁ、バーティは規則集を隅すみから隅まで知り尽くしている」バグマンはニッコリ笑い、これでけりがついたという顔で、カルカロフとマダム・マクシームのほうを見た。