「わたしのほかの生徒に、もう一度名前を入れさせるように主張する」カルカロフが言った。ねっとりしたへつらい声も、笑みも、いまやかなぐり捨てていた。まさに醜悪しゅうあくな形相ぎょうそうだった。「『炎のゴブレット』をもう一度設せっ置ちしていただこう。そして各校二名の代表選手になるまで、名前を入れ続けるのだ。それが公平というものだ。ダンブルドア」
「しかし、カルカロフ、そういう具合にはいかない」バグマンが言った。「『炎のゴブレット』は、たったいま火が消えた――次の試合まではもう、火がつくことはない――」
「――次の試合に、ダームストラングが参加することは決してない!」カルカロフが怒りを爆発させた。「あれだけ会議や交渉こうしょうを重ね、妥だ協きょうしたのに、このようなことが起こるとは、思いもよらなかった! いますぐにでも帰りたい気分だ!」
「はったりだな。カルカロフ」扉とびらの近くで唸うなるような声がした。「代表選手を置いて帰ることはできまい。選手は競わなければならん。選ばれたものは全員、競わなければならんのだ。ダンブルドアも言ったように、魔ま法ほう契けい約やくの拘こう束そく力りょくだ。都合のいいことにな。え?」
ムーディが部屋に入ってきたところだった。足を引きずって暖だん炉ろに近づき、右足を踏ふみ出すごとに、コツッと大きな音を立てた。
「都合がいい?」カルカロフが聞き返した。「何のことかわかりませんな。ムーディ」
カルカロフが、ムーディの言うことは聞くに値しないとでもいうように、わざと軽けい蔑べつした言い方をしていることが、ハリーにはわかった。カルカロフの手が、言葉とは裏うら腹はらに、固くこぶしを握り締めていた。
「わからん?」ムーディが低い声で言った。「カルカロフ、簡単なことだ。ゴブレットから名前が出てくればポッターが戦わなければならぬと知っていて、誰かがポッターの名前をゴブレットに入れた」