「わしの妄もう想そうだとでも?」ムーディが唸った。「ありもしないものを見るとでも? え? あのゴブレットにこの子の名前を入れるような魔法使いは、腕のいいやつだ……」
「おお、どんな証しょう拠こがあるというのでーすか?」マダム・マクシームが、バカなことを言わないで、とばかり、巨大な両手をパッと開いた。
「なぜなら、強力な魔力を持つゴブレットの目を眩くらませたからだ!」ムーディが言った。「あのゴブレットを欺あざむき、試合には三校しか参加しないということを忘れさせるには、並はずれて強力な『錯さく乱らんの呪じゅ文もん』をかける必要があったはずだ……わしの想像では、ポッターの名前を、四校目の候こう補ほ者しゃとして入れ、四校目はポッター一人しかいないようにしたのだろう……」
「この件には随ずい分ぶんとお考えを巡らされたようですな、ムーディ」カルカロフが冷たく言った。
「それに、実に独どく創そう的てきな説ですな――しかし、聞き及ぶところでは、最近あなたは、誕生たんじょう祝いのプレゼントの中に、バジリスクの卵が巧妙こうみょうに仕込まれていると思い込み、粉こな々ごなに砕くだいたとか。ところがそれは馬車用の時計だと判明したとか。これでは、我々があなたの言うことを真まに受けないのも、ご理解いただけるかと……」
「何気ない機会をとらえて悪用する輩やからはいるものだ」ムーディが威い嚇かくするような声で切り返した。「闇やみの魔法使いの考えそうなことを考えるのがわしの役目だ――カルカロフ、君なら身に覚えがあるだろうが……」
「アラスター!」ダンブルドアが警けい告こくするように呼びかけた。
ハリーは一瞬いっしゅん、誰に呼びかけたのかわからなかった。しかし、すぐに「マッド‐アイ」がムーディの実名であるはずがないと気がついた。ムーディは口をつぐんだが、それでも、カルカロフの様子を楽しむように眺ながめていた――カルカロフの顔は燃えるように赤かった。