「カルカロフ校長、マダム・マクシーム――寝る前の一杯はいかがかな?」ダンブルドアが誘った。
しかし、マダム・マクシームは、もうフラーの肩を抱き、すばやく部屋から連れ出すところだった。ハリーは、二人が大おお広ひろ間まに向かいながら、早口のフランス語で話しているのを聞いた。カルカロフはクラムに合図し、こちらは黙だまりこくって、やはり部屋を出ていった。
「ハリー、セドリック。二人とも寮りょうに戻って寝るがよい」ダンブルドアが微ほほ笑えみながら言った。「グリフィンドールもハッフルパフも、君たちと一いっ緒しょに祝いたくて待っておるじゃろう。せっかくドンチャン騒ぎをする格かっ好こうの口実があるのに、だめにしてはもったいないじゃろう」
ハリーはセドリックをちらりと見た。セドリックが頷うなずき、二人は一緒に部屋を出た。
大広間はもう誰もいなかった。蝋ろう燭そくが燃えて短くなり、くり抜きかぼちゃのニッと笑ったギザギザの歯を、不気味にチロチロと光らせていた。
「それじゃ」セドリックがちょっと微笑みながら言った。「僕たち、またお互いに戦うわけだ!」
「そうだね」ハリーはほかに何と言っていいのか、思いつかなかった。誰かに頭の中を引っ掻かき回されたかのように、ゴチャゴチャしていた。
「じゃ……教えてくれよ……」玄げん関かんホールに出たとき、セドリックが言った。
「炎ほのおのゴブレット」が取り去られたあとのホールを、松たい明まつの明かりだけが照らしていた。
「いったい、どうやって、名前を入れたんだい?」
「入れてない」ハリーはセドリックを見上げた。「僕、入れてないんだ。僕、ほんとうのことを言ってたんだよ」
「フーン……そうか」ハリーにはセドリックが信じていないことがわかった。
「それじゃ……またね」とセドリックが言った。
大だい理り石せきの階段を上らず、セドリックは右側のドアに向かった。ハリーはその場に立ち尽くし、セドリックがドアの向こうの石段を下りる音を聞いてから、ノロノロと大理石の階段を上りはじめた。