しかし、ハリーが空腹ではないなど、誰も聞こうとはしなかった。ゴブレットに名前を入れなかったなど、誰も聞こうとはしなかった。ハリーが祝う気分になれないことなど、誰一人気づく者はいないようだ……リー・ジョーダンはグリフィンドール寮りょう旗きをどこからか持ち出してきて、ハリーにそれをマントのように巻きつけると言ってきかなかった。ハリーは逃げられなかった。寝しん室しつに上る階段のほうにそっとにじり寄ろうとするたびに、人ひと垣がきが周りを固め、やれバタービールを飲めと無理やり勧め、やれポテトチップを食え、ピーナッツを食えとハリーの手に押しつけた……誰もが、ハリーがどうやったのかを知りたがった。どうやってダンブルドアの「年ねん齢れい線せん」を出し抜き、名前をゴブレットに入れたのかを……。
「僕、やってない」ハリーは何度も何度も繰り返した。「どうしてこんなことになったのか、わからないんだ」
しかし、どうせ誰も聞く耳を持たない以上、ハリーが何も答えていないも同様だった。
「僕、疲れた!」三十分もたったころ、ハリーはついに怒ど鳴なった。「ダメだ。ほんとに。ジョージ――僕、もう寝るよ――」
ハリーは何よりもロンとハーマイオニーに会いたかった。少しでも正気に戻りたかった。しかし、二人とも談だん話わ室しつにはいないようだった。ハリーはどうしても寝ると言い張り、階段の下で小こ柄がらなクリービー兄弟がハリーを待ち受けているのを、ほとんど踏ふみつぶしそうになりながら、やっとのことでみんなを振り切り、寝しん室しつへの階段をできるだけ急いで上った。
誰もいない寝室に、ロンがまだ服を着たまま一人でベッドに横になっているのを見つけ、ハリーはほっとした。ハリーがドアをバタンと閉めると、ロンがこっちを見た。