一方、シリウスからは何の返事も来なかったし、ヘドウィグはハリーのそばに来ることを拒こばんでいた。その上、トレローニー先生はこれまでより自信たっぷりに、ハリーの死を予言し続けていた。しかも、フリットウィック先生の授業で、ハリーは「呼よび寄よせ呪じゅ文もん」の出来が悪く、特別に宿題を出されてしまった――宿題を出されたのはハリー一人だけだった。ネビルは別として。
「そんなに難しくないのよ、ハリー」フリットウィック先生の教室を出るとき、ハーマイオニーが励ました――授業中ずっと、ハーマイオニーは、まるで変な万ばん能のう磁じ石しゃくになったかのように、黒板消し、紙くず籠かご、月げっ球きゅう儀ぎなどをブンブン自分のほうに引き寄せていた。
「あなたは、ちゃんと意識を集中してなかっただけなのよ――」
「なぜそうなんだろうね?」ハリーは暗い声を出した。ちょうど、セドリック・ディゴリーが、大勢の追っかけ女子学生に取り囲まれ、ハリーのそばを通り過ぎるところで、取り巻き全員が、まるで特大の「尻しっ尾ぽ爆ばく発はつスクリュート」でも見るような目でハリーを見た。
「これでも――気にするなってことかな。午後から二時限続きの『魔ま法ほう薬やく学がく』の授業がある。お楽しみだ……」
二時限続きの「魔法薬学」の授業ではいつも嫌いやな経験をしていたが、このごろはまさに拷ごう問もんだった。学校の代表選手になろうなどと大それたことをしたハリーを、ぎりぎり懲こらしめてやろうと待ち構えているスネイプやスリザリン生と一いっ緒しょに、地ち下か牢ろう教きょう室しつに一時間半も閉じ込められるなんて、どう考えても、ハリーにとっては最悪だった。もう先週の金曜日に、その苦痛を一回分、ハリーは味わっていた。ハーマイオニーが隣となりに座り、声を殺して「がまん、がまん、がまん」とお経のように唱となえていた。今日も状況がましになっているとは思えない。