ハリーとロンが同時にスネイプに向かって叫んだ。同時だったのが、たぶん幸運だった。二人の声が石の廊ろう下かに大きくこだましたのも幸運だった。ガンガンという騒音で、二人がスネイプを何呼ばわりしたのか、はっきり聞き取れなかったはずだ。それでも、スネイプにはだいたいの意味がわかったらしい。
「左さ様よう」スネイプが最高の猫ねこ撫なで声で言った。「グリフィンドール、五十点減点。ポッターとウィーズリーはそれぞれ居い残のこり罰ばっだ。さあ、教室に入りたまえ。さもないと一週間居残り罰を与えるぞ」
ハリーはジンジン耳鳴りがした。あまりの理り不ふ尽じんさに、スネイプに呪のろいをかけてベトベトの千切りにしてやりたかった。スネイプの脇わきを通り抜け、ハリーはロンと一いっ緒しょに地ち下か牢ろう教きょう室しつのいちばん後ろに行き、カバンをバンと机に叩たたきつけた。ロンも怒りでワナワナ震ふるえていた――一瞬いっしゅん、二人の仲がすべて元通りになったように感じられた。しかし、ロンはぷいとそっぽを向き、ハリー一人をその机に残して、ディーンやシェーマスと一いっ緒しょに座った。地下牢教室の向こう側で、マルフォイがスネイプに背中を向け、ニヤニヤしながら胸のバッジを押した。
「汚いぞ、ポッター」の文字が、再び教室の向こうで点てん滅めつした。
授業が始まると、ハリーは、スネイプを恐ろしい目に遭あわせることを想像しながら、じっとスネイプを睨にらみつけていた……「磔はりつけの呪じゅ文もん」が使えさえしたらなあ……あのクモのように、スネイプを仰あお向むけにひっくり返し、七しち転てん八ばっ倒とうさせてやるのに……。