そこはかなり狭せまい教室だった。机は大部分が部屋の隅すみに押しやられて、真ん中に大きな空間ができていた。ただし、黒板の前に、机が三さん卓たくだけ、横につなげて置いてあり、たっぷりとした長さのビロードのカバーがかけられていた。その机の向こうに、椅子が五脚並び、その一つにルード・バグマンが座って、濃こい赤あか紫むらさき色いろのローブを着た魔女と話をしていた。ハリーには見覚えのない魔女だ。
ビクトール・クラムはいつものようにむっつりして、誰とも話をせず、部屋の隅に立っていた。セドリックとフラーは何か話していた。フラーはいままででいちばん幸せそうに見える、とハリーは思った。フラーは、しょっちゅう頭をのけ反らせ、長いシルバーブロンドの髪かみが光を受けるようにしていた。微かすかに煙の残る、黒い大きなカメラを持った中年肥ぶとりの男が、横目でフラーを見つめていた。
バグマンが突然ハリーに気づき、急いで立ち上がって弾はずむように近づいた。
「ああ、来たな! 代表選手の四番目! さあ、お入り、ハリー。さあ……何も心配することはない。ほんの『杖つえ調しらべ』の儀ぎ式しきなんだから。ほかの審しん査さ員いんも追っつけ来るはずだ――」
「杖調べ?」ハリーが心配そうに聞き返した。
「君たちの杖が、万全の機能を備えているかどうか、調べないといかんのでね。つまり、問題がないように、ということだ。これからの課題にはもっとも重要な道具なんでね」バグマンが言った。「専門家がいま、上でダンブルドアと話している。それから、ちょっと写真を撮とることになる。こちらはリータ・スキーターさんだ」
赤紫のローブを着た魔女を指しながら、バグマンが言った。
「この方が、試合について、『日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん』に短い記事を書く……」
「ルード、そんなに短くはないかもね」リータ・スキーターの目はハリーに注がれていた。
スキーター女じょ史しの髪かみは、念入りにセットされ、奇妙にかっちりしたカールが、角かく張ばった顎あごの顔つきとは絶妙にちぐはぐだった。宝石で縁ふちが飾られたメガネをかけている。ワニ革がわハンドバッグをがっちり握った太い指の先は、真っ赤に染めた五センチもの爪つめだ。