リータ・スキーターは、眉まゆペンで濃こく描いた片方の眉まゆを吊つり上げた。
「大丈夫、ハリー。叱しかられるんじゃないかなんて、心配する必要はないざんすよ。君がほんとうは参加するべきじゃなかったとわかってるざんす。だけど、心配ご無用。読者は反逆者が好きなんざんすから」
「だって、僕、入れてない」ハリーが繰り返した。「僕知らない。いったい誰が――」
「これから出る課題をどう思う?」リータ・スキーターが聞いた。「わくわく? 怖こわい?」
「僕、あんまり考えてない……うん。怖い、たぶん」そう言いながら、ハリーは何だか気まずい思いに、胸がのたうった。
「過去に、代表選手が死んだことがあるわよね?」リータ・スキーターがずけずけ言った。
「そのことをぜんぜん考えなかったのかな?」
「えーと……今年はずっと安全だって、みんながそう言ってます」ハリーが答えた。
羽根ペンは二人の間で、羊よう皮ひ紙しの上をスケートするかのように、ヒュンヒュン音を立てて往いったり来たりしていた。
「もちろん、君は、死に直面したことがあるわよね?」リータ・スキーターが、ハリーをじっと見た。「それが、君にどういう影響を与えたと思う?」
「えーと」ハリーはまた「えーと」を繰り返した。
「過去のトラウマが、君を自分の力を示したいという気持にさせてると思う? 名前に恥じないように? もしかしたらそういうことかな――三校対抗試合に名前を入れたいという誘ゆう惑わくに駆かられた理由は――」
「僕、名前を入れてないんです」ハリーはイライラしてきた。
「君、ご両親のこと、少しは覚えてるのかな?」ハリーの言葉を遮さえぎるようにリータ・スキーターが言った。
「いいえ」ハリーが答えた。
「君が三校対抗試合で競きょう技ぎすると聞いたら、ご両親はどう思うかな? 自じ慢まん? 心配する? 怒る?」