ハリーはいい加減うんざりしてきた。両親が生きていたらどう思うかなんて、僕にわかるわけがないじゃないか? リータ・スキーターがハリーを食い入るように見つめているのを、ハリーは意識していた。ハリーは顔をしかめて女史の視し線せんをはずし、下を向いて羽根ペンが書いている文字を見た。
自分がほとんど覚えていない両親のことに話題が移ると、驚くほど深い緑の目に涙が溢あふれた。
「僕、目に涙なんかない!」ハリーは大声を出した。
リータ・スキーターが何か言う前に、箒ほうき置おき場のドアが外側から開いた。眩まぶしい光に目を瞬しばたたきながら、ハリーはドアのほうを振り返った。アルバス・ダンブルドアが、物置で窮屈きゅうくつそうにしている二人を見下ろして、そこに立っていた。
「ダンブルドア!」リータ・スキーターはいかにもうれしそうに叫さけんだ――しかし、羽根ペンも羊よう皮ひ紙しも、「魔ま法ほう万ばん能のう汚よごれ落し」の箱の上から忽こつ然ぜんと消えたし、女じょ史しの鉤かぎ爪づめ指が、ワニ革がわバッグの留め金を慌あわててパチンと閉めたのを、ハリーは見み逃のがさなかった。
「お元気ざんすか?」
女史は立ち上がって、大きな男っぽい手をダンブルドアに差し出して、握あく手しゅを求めた。
「この夏にあたくしが書いた、『国こく際さい魔ま法ほう使つかい連れん盟めい会かい議ぎ』の記事をお読みいただけたざんしょか?」
「魅み力りょく的てきな毒どく舌ぜつじゃった」ダンブルドアは目をキラキラさせた。「とくに、わしのことを『時代遅れの遺い物ぶつ』と表現なさったあたりがのう」
リータ・スキーターは一いっ向こうに恥じる様子もなく、しゃあしゃあと言った。
「あなたのお考えが、ダンブルドア、少し古臭いという点を指し摘てきしたかっただけざんす。それに巷ちまたの魔法使いの多くは――」
「慇いん懃ぎん無礼の理由については、リータ、またぜひお聞かせ願いましょうぞ」ダンブルドアは微ほほ笑えみながら、丁てい寧ねいに一礼した。「しかし、残念ながら、その話は後日に譲ゆずらねばならん。『杖つえ調しらべ』の儀ぎ式しきがまもなく始まるのじゃ。代表選手の一人が、箒置き場に隠されていたのでは、儀式ができんのでの」