「そうじゃな」翁は静かに言った。「二十四センチ……しなりにくい……紫し檀たん……芯しんには……おお、なんと……」
「ヴィーラの髪かみの毛でーす」フラーが言った。「わたーしのおばーさまのものでーす」
それじゃ、フラーにはやっぱりヴィーラが混じってるんだ、ロンに話してやろうと、ハリーは思った……そして、ロンがハリーに口をきかなくなっていることを思い出した。
「そうじゃな」オリバンダー翁が言った。「そうじゃ。むろん、わし自身は、ヴィーラの髪を使用したことはないが――わしの見るところ、少々気まぐれな杖になるようじゃ……しかし、人それぞれじゃし、あなたに合っておるなら……」
オリバンダー翁は杖に指を走らせた。傷きずや凸でこ凹ぼこを調べているようだった。それから「オーキデウス! 花よ!」と呟つぶやくと、杖先にワッと花が咲さいた。
「よーし、よし。上じょう々じょうの状態じゃ」オリバンダー翁は花を摘つみ採とり、杖と一いっ緒しょにフラーに手渡しながら言った。
「ディゴリーさん。次はあなたじゃ」
フラーはふわりと席に戻り、セドリックとすれ違うときに微ほほ笑えみかけた。
「さてと。この杖は、わしの作ったものじゃな?」セドリックが杖を渡すと、オリバンダー翁の言葉に熱がこもった。「そうじゃ、よく覚えておる。際きわ立だって美しいオスの一角獣ユニコーンの尻しっ尾ぽの毛が一本入っておる……身の丈たけ一六〇センチはあった。尻尾の毛を引き抜いたとき、危うく角で突き刺さされるところじゃった。三十センチ……トネリコ材……心地よくしなる。上々の状態じゃ……しょっちゅう手入れしているのかね?」
「昨夜磨みがきました」セドリックがニッコリした。
ハリーは自分の杖を見下ろした。あちこち手て垢あかだらけだ。ローブの膝ひざのあたりをつかんで、こっそり杖をこすってきれいにしようとした。杖先から金色の火花がパラパラと数個飛び散った。フラー・デラクールが、やっぱり子供ね、という顔でハリーを見たので、拭ふくのをやめた。