ハリーは立ち上がって、クラムと入れ違いにオリバンダー翁に近づき、杖を渡した。
「おぉぉぉー、そうじゃ」オリバンダー翁の淡い目が急に輝かがやいた。「そう、そう、そう。よーく覚えておる」
ハリーもよく覚えていた。まるで昨日きのうのことのようにありありと……。
三年前の夏、十一歳の誕たん生じょう日びに、ハグリッドと一いっ緒しょに、杖を買いにオリバンダーの店に入った。オリバンダー老人は、ハリーの寸法を採とり、それから、次々と杖を渡して試させた。店中のすべての杖を試し振りしたのではないかと思ったころ、ついにハリーに合う杖が見つかった――この杖だ。ヒイラギ、二十八センチ、不ふ死し鳥ちょうの尾お羽ば根ねが一枚入っている。オリバンダー老人は、ハリーがこの杖とあまりにも相性がよいことに驚いていた。「不思議じゃ」と、あのとき老人は呟つぶやいた。「……不思議じゃ」と。ハリーが、なぜ不思議なのかと問うと、オリバンダー老人は、初めて教えてくれた。ハリーの杖に入っている不死鳥の尾羽根も、ヴォルデモート卿きょうの杖つえ芯しんに使われている尾羽根も、まさに同じ不死鳥のものだと。
ハリーはこのことを誰にも話したことがなかった。この杖がとても気に入っていたし、杖がヴォルデモートとつながりがあるのは、杖自身にはどうしようもないことだ――ちょうど、ハリーがペチュニアおばさんとつながりがあるのをどうしようもないのと同じように。しかし、ハリーは、オリバンダー翁がそのことを、この部屋のみんなに言わないでほしいと、真剣にそう願った。そんなことを漏もらせば、リータ・スキーターの自じ動どう速そっ記き羽は根ねペンが、興こう奮ふんで爆発するかもしれないと、ハリーは変な予感がした。
オリバンダー翁は、ほかの杖よりずっと長い時間をかけてハリーの杖を調べた。最後に、杖からワインを迸ほとばしり出させ、杖はいまも完かん璧ぺきな状態を保っていると告げ、杖をハリーに返した。