「あの人、ハンサムでも何でもないじゃない!」クラムの険しい横顔を睨にらみつけて、ハーマイオニーがぷりぷりしながら呟つぶやいた。
「みんなが夢中なのは、あの人が有名だからよ! ウォンキー・フェイントとか何とかいうのができない人だったら、みんな見向きもしないのに――」
「ウロンスキー・フェイント」ハリーは唇くちびるを噛かんだ。クィディッチ用語を正しく使いたいのも確かだが、それとは別に、ハーマイオニーがウォンキー・フェイントと言うのを聞いたら、ロンがどんな顔をするかと思うと、また胸がキュンと痛んだのだ。
不思議なことに、何かを恐れて、何とかして時の動きを遅らせたいと思うときにかぎって、時は容よう赦しゃなく動きを速める。第一の課題までの日々が、誰かが時計に細工をして、二倍の速さにしたかのように流れ去っていった。抑えようのない恐怖感が、「日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん」の記事に対する意地の悪い野や次じと同じように、ハリーの行くところどこにでもついてきた。
第一の課題が行われる週の前の土曜日、三年生以上の生徒は全員、ホグズミード行きを許可された。ハーマイオニーは、ちょっと城から出たほうが気晴らしになると勧めた。ハリーも勧められるまでもなかった。
「ロンのことはどうする気?」ハリーが聞いた。「ロンと一いっ緒しょに行きたくないの?」
「ああ……そのこと……」ハーマイオニーはちょっと赤くなった。「『三さん本ぼんの箒ほうき』で、あなたと私が、ロンに会うようにしたらどうかと思って……」
「いやだ」ハリーがにべもなく言った。
「まあ、ハリー、そんなばかみたいな――」
「僕、行くよ。でもロンと会うのはごめんだ。僕、『透とう明めいマント』を着ていく」
「そう、それならそれでいいけど……」ハーマイオニーはくどくは言わなかった。「だけど、マントを着てるときにあなたに話しかけるのは嫌いよ。あなたのほうを向いてしゃべってるのかどうか、さっぱりわからないんだもの」
そういうわけで、ハリーは寮りょうで「透明マント」をかぶり、階下に戻って、ハーマイオニーと一いっ緒しょにホグズミードに出かけた。