「ねえ、この村の人たちに、S・P・E・Wに入ってもらうように、私、やってみようかしら」
ハーマイオニーはパブを見回しながら考え深げに言った。
「そりゃ、いいや」ハリーは冗じょう談だん交まじりに相あい槌づちを打ち、マントに隠れてバタービールをぐいと飲んだ。「ハーマイオニー。いつになったらS・P・E・Wなんてやつ、諦あきらめるんだい?」
「屋や敷しきしもべ妖よう精せいが妥当な給料と労働条件を得たとき!」ハーマイオニーが声を殺して言い返した。「ねえ、そろそろ、もっと積極的な行動を取るときじゃないかって思いはじめてるの。どうやったら学校の厨房ちゅうぼうに入れるかしら?」
「わからない。フレッドとジョージに聞けよ」ハリーが言った。
ハーマイオニーは考えに耽ふけって、黙だまり込んだ。ハリーは、パブの客を眺ながめながらバタービールを飲んだ。みんな楽しそうで、くつろいでいた。すぐ近くのテーブルで、アーニー・マクミランとハンナ・アボットが、蛙かえるチョコレートのカードを交換している。二人とも「セドリック・ディゴリーを応おう援えんしよう」バッジをマントに着けていた。その向こう、ドアのそばに、チョウ・チャンがレイブンクローの大勢の友達と一いっ緒しょにいるのが見えた。でも、チョウは「セドリック」バッジを着けていない……ハリーはちょっぴり元気になった……。
のんびり座り込んで、笑ったり、しゃべったり、せいぜい宿題のことしか心配しなくてもよい人たち――自分もその一人になれるなら、ほかに何を望むだろう? 自分の名前が「炎ほのおのゴブレット」から出てきていなかったら、いま、自分はどんな気持でここにいるだろう。まず、「透とう明めいマント」は着ていないはずだ。ロンは自分と一いっ緒しょにいるだろう。代表選手たちが、火曜日に、どんな危険極まりない課題に立ち向かうのだろうと、三人で楽しく、あれこれ想像していただろう。どんな課題だろうが、きっと待ち遠しかったと思う。代表選手がそれをこなすのを見物するのが……スタンドの後方にぬくぬくと座って、みんなと一緒にセドリックを応援するのが……。