ハリーが見ていると、ハグリッドとムーディは立ち上がって出ていきかけた。ハリーは手を振ったが、ハグリッドには見えないのだと気づいた。しかし、ムーディは立ち止まり、ハリーが立っている隅すみのほうに「魔法の目」を向けた。ムーディは、ハグリッドの背中をチョンチョンと叩たたき(ハグリッドの肩には手が届かない)、何事か囁ささやいた。それから二人は引き返して、ハリーとハーマイオニーのテーブルにやってきた。
「元気か、ハーマイオニー?」ハグリッドが大声を出した。
「こんにちは」ハーマイオニーもニッコリ挨あい拶さつした。
ムーディは、片足を引きずりながらテーブルを回り込んで、体を屈めた。ムーディはS・P・E・Wのノートを読んでいるのだろうとハリーが思っていると、そのムーディが囁いた。
「いいマントだな、ポッター」
ハリーは驚いてムーディを見つめた。こんな近くで見ると、鼻が大きく削そぎ取られているのがますますはっきりわかった。ムーディはニヤリとした。
「先生の目――あの、見える――?」
「ああ、わしの目は『透とう明めいマント』を見み透すかす」ムーディが静かに言った。「そして、ときには、これがなかなか役に立つぞ」
ハグリッドもニッコリとハリーのほうを見下ろしていた。ハグリッドにはハリーが見えないことは、わかっていた。しかし、当然ムーディが、ハリーがここにいると教えたはずだ。
こんどはハグリッドが、S・P・E・Wノートを読むふりをして、身を屈かがめ、ハリーにしか聞こえないような低い声で囁いた。
「ハリー、今晩、真夜中に、俺おれの小屋に来いや。そのマントを着てな」身を起こすと、ハグリッドは大声で、「ハーマイオニー、おまえさんに会えてよかった」と言い、ウィンクして去っていった。ムーディもあとについていった。