「ハリー、おまえさんか?」戸を開けてキョロキョロしながら、ハグリッドが声をひそめて言った。
「うん」ハリーは小屋の中に滑すべり込み、マントを引っ張って頭から脱ぬいだ。「何なの?」
「ちょっくら見せるものがあってな」ハグリッドが言った。
ハグリッドは何だかひどく興こう奮ふんしていた。服のボタン穴に育ちすぎたアーティチョークのような花を挿さしている。車しゃ軸じく用のグリースを髪かみにつけることは諦あきらめたらしいが、間違いなく髪を梳くしけずろうとしたらしい――欠けた櫛くしの歯はが髪に絡からまっているのを、ハリーは見てしまった。
「何を見せたいの?」
ハリーは、スクリュートが卵を産んだのか、それともハグリッドがパブで知らない人から、また三さん頭とう犬けんを買ったのかと、いろいろ想像して恐こわ々ごわ聞いた。
「一いっ緒しょに来いや。黙だまって、マントをかぶったまんまでな」ハグリッドが言った。「ファングは連れていかねえ。こいつが喜ぶようなもんじゃねえし……」
「ねえ、ハグリッド、僕、あまりゆっくりできないよ……午前一時までに城に帰っていないといけないんだ――」
しかし、ハグリッドは、聞いていなかった。小屋の戸を開けてずんずん暗くら闇やみの中に出ていった。ハリーは急いであとを追ったが、ハグリッドがハリーをボーバトンの馬車のほうに連れていくのに気づいて驚いた。
「ハグリッド、いったい――?」
「シーッ!」ハリーを黙だまらせ、ハグリッドは金色の杖つえが交差した紋章もんしょうのついた扉とびらを三度ノックした。マダム・マクシームが扉を開けた。シルクのショールを堂々たる肩に巻きつけている。ハグリッドを見て、マダムはニッコリした。
「ああ、アハグリッド……時間でーす?」
「ボングこん・・スーワーばんは」ハグリッドがマダムに向かって笑いかけ、マダムが金色の踏ふみ段を降りるのに手を差し伸べた。