シリウスは憂うれいに満ちた目でハリーを見つめていた。アズカバンがシリウスに刻み込んだ眼まな差ざしが、まだ消え去ってはいない――死んだような、憑つかれたような眼差しだ。シリウスはハリーが黙だまり込むまで、口を挟はさまずしゃべらせたあと、口を開いた。
「ドラゴンは、ハリー、何とかなる。しかし、それはちょっとあとにしよう――あまり長くはいられない……この火を使うのに、とある魔法使いの家に忍び込んだのだが、家の者がいつ戻ってこないともかぎらない。君に警けい告こくしておかなければならないことがあるんだ」
「何なの?」ハリーは、ガクンガクンと数段気分が落ち込むような気がした……ドラゴンより悪いものがあるのだろうか?
「カルカロフだ」シリウスが言った。「ハリー、あいつは『死し喰くい人びと』だった。それが何か、わかってるね?」
「ええ――えっ?――あの人が?」
「あいつは逮たい捕ほされた。アズカバンで一いっ緒しょだった。しかし、あいつは釈放しゃくほうされた。ダンブルドアが今年『闇やみ祓ばらい』をホグワーツに置きたかったのは、そのせいだ。絶対間違いない――あいつを監かん視しするためだ。カルカロフを逮捕したのはムーディだ。そもそもムーディがやつをアズカバンにぶち込んだ」
「カルカロフが釈放しゃくほうされた?」ハリーはよく飲み込めなかった。脳みそが、また一つショックな情報を吸収しようとしてもがいていた。「どうして釈放したの?」
「魔ま法ほう省しょうと取引をしたんだ」シリウスが苦にが々にがしげに言った。
「自分が過あやまちを犯したことを認めると言った。そしてほかの名前を吐はいた……自分の代わりにずいぶん多くの者をアズカバンに送った……言うまでもなく、あいつはアズカバンでは嫌われ者だ。そして、出獄しゅつごくしてからは、わたしの知るかぎり、自分の学校に入学する者には全員に『闇やみの魔ま術じゅつ』を教えてきた。だから、ダームストラングの代表選手にも気をつけなさい」