「いいかい。わたしはバーサ・ジョーキンズを知っていた」シリウスが深しん刻こくな声で言った。「わたしと同じ時期にホグワーツにいた。君の父さんやわたしより二、三年上だ。とにかく愚おろかな女だった。知りたがり屋で、頭がまったく空からっぽ。これは、いい組み合わせじゃない。ハリー、バーサなら、簡単に罠わなにはまるだろう」
「じゃ……それじゃ、ヴォルデモートが試合のことを知ったかもしれないって? そういう意味なの? カルカロフがヴォルデモートの命めいを受けてここに来たと、そう思うの?」
「わからない」シリウスは考えながら答えた。「とにかくわからないが……カルカロフは、ヴォルデモートの力が強大になって、自分を守ってくれると確信しなければ、ヴォルデモートの下もとに戻るような男ではないだろう。しかし、ゴブレットに君の名前を入れたのが誰であれ、理由があって入れたのだ。それに、試合は、君を襲おそうには好都合だし、事故に見せかけるにはいい方法だと考えざるをえない」
「僕のいまの状況から考えると、本当にうまい計画みたい」ハリーが力なく言った。「自分はのんびり見物しながら、ドラゴンに仕事をやらせておけばいいんだもの」
「そうだ――そのドラゴンだが」シリウスは早口になった。「ハリー、方法はある。『失しっ神しんの呪じゅ文もん』を使いたくても、使うな――ドラゴンは強いし、強力な魔力を持っているから、たった一人の呪文でノックアウトできるものではない。半ダースもの魔法使いが束たばになってかからないと、ドラゴンは抑おさえられない――」
「うん。わかってる。さっき見たもの」ハリーが言った。
「しかし、それが一人でもできる方法があるのだ。簡単な呪文があればいい。つまり――」