ハリーが大だい理り石せきの階段の下に来たとき、セドリックは階段の上にいた。六年生の友達がたくさん一緒だった。ハリーはその生徒たちの前でセドリックに話をしたくなかった。みんな、ハリーが近づくと、いつも、リータ・スキーターの記事を持ち出す連中だった。ハリーは間を置いてセドリックのあとをつけた。すると、セドリックが「呪じゅ文もん学がく」の教室への廊ろう下かに向かっていることがわかった。そこで、ハリーは閃ひらめいた。一団から離れたところで、ハリーは杖つえを取り出し、しっかり狙いを定めた。
「ディフィンド! 裂さけよ!」
セドリックのカバンが裂けた。羊よう皮ひ紙しやら、羽根ペン、教科書がバラバラと床に落ち、インク瓶びんがいくつか割れた。
「かまわないで」友人が屈かがみ込んで手伝おうとしたが、セドリックは、まいったなという声で言った。「フリットウィックに、すぐ行くって伝えてくれ。さあ行って……」
ハリーの思う壺つぼだった。杖をローブにしまい、ハリーはセドリックの友達が教室へと消えるのを待った。そして、二人しかいなくなった廊ろう下かを、急いでセドリックに近づいた。
「やあ」インクまみれになった「上じょう級きゅう変へん身しん術じゅつ」の教科書を拾い上げながら、セドリックが挨あい拶さつした。「僕のカバン、たったいま、破れちゃって……まだ新品なんだけど……」
「セドリック、第一の課題はドラゴンだ」
「えっ?」セドリックが目を上げた。
「ドラゴンだよ」ハリーは早口に言った。フリットウィック先生がセドリックはどうしたかと見に出てきたら困る。「四頭だ。一人に一頭。僕たち、ドラゴンを出し抜かないといけない」
セドリックはまじまじとハリーを見た。ハリーが土曜日の夜以来感じてきた恐怖感が、いまセドリックのグレーの目にチラついているのを、ハリーは見た。