「ポッター、一いっ緒しょに来い」ムーディが唸うなるような声で言った。「ディゴリー、もう行け」
ハリーは不安げにムーディを見た。二人の会話を聞いたのだろうか?
「あの――先生。僕、『薬やく草そう学がく』の授業が――」
「かまわん、ポッター。わしの部屋に来てくれ……」
ハリーは、こんどは何が起こるのだろうと思いながら、ムーディについていった。ハリーがどうしてドラゴンのことを知ったか、ムーディが問い質ただしたいのだとしたら? ムーディはハグリッドのことをダンブルドアに告げ口するのだろうか? それとも、ハリーをケナガイタチに変えてしまうだけだろうか? まあ、イタチになったほうが、ドラゴンを出し抜きやすいかもしれないな、とハリーはぼんやり考えた。小さくなったら、十五、六メートルの高さからはずっと見えにくくなるし……。
ハリーはムーディの部屋に入った。ムーディはドアを閉め、向き直ってハリーを見た。「魔法の目」も、普通の目も、ハリーに注がれた。
「いま、おまえのしたことは、ポッター、非常に道徳的な行為だ」ムーディは静かに言った。
ハリーは何と言ってよいかわからなかった。こういう反応はまったく予期していなかった。
「座りなさい」ムーディに言われてハリーは座り、あたりを見回した。
この部屋には、これまで二人の違う先生のときに、何度か来たことがある。ロックハート先生のときは、壁かべにベタベタ貼はられた先生自身の写真がニッコリしたり、ウィンクしたりしていた。ルーピンのときは、先生がクラスで使うために手に入れた、新しい、何だかおもしろそうな闇やみの生物の見本が置いてあったものだった。しかしいま、この部屋は、飛びっきり奇妙なもので一杯だった。ムーディが「闇やみ祓ばらい」時代に使ったものだろうとハリーは思った。