机の上には、ひびの入った大きなガラスの独こ楽まのようなものがあった。ハリーは、それが「かくれん防止器スニーコスコープ」だとすぐにわかった。ムーディのよりはずっと小さいが、ハリーも一つ持っていたからだ。隅すみっこの小さいテーブルには、ことさらにくねくねした金色のテレビアンテナのような物が立っている。微かすかにブーンと唸りを上げていた。ハリーの向かい側の壁に掛かかった鏡のようなものは、部屋を映うつしてはいない。影のようなぼんやりした姿が、中で蠢うごめいていた。どの姿もぼやけている。
「わしの『闇やみ検けん知ち器き』が気に入ったか?」ハリーを観察していたムーディが聞いた。
「あれは何ですか?」ハリーは金色のくねくねアンテナを指差した。
「『秘ひ密みつ発はっ見けん器き』だ。何か隠しているものや、嘘うそを探知すると振しん動どうする……ここでは、もちろん、干かん渉しょう波はが多すぎて役に立たない――生徒たちが四し方ほう八はっ方ぽうで嘘をついている。なぜ宿題をやってこなかったかとかだがな。ここに来てからというもの、ずっと唸りっぱなしだ。『かくれん防止器』も止めておかないといけなくなった。ずっと警けい報ほうを鳴らし続けるのでな。こいつは特別に感度がよく、半径二キロの事じ象しょうを拾う。もちろん、子供のガセネタばかりを拾っているわけではないはずだが」ムーディは唸うなるように最後の言葉をつけ足した。
「それじゃ、あの鏡は何のために?」
「ああ、あれはわしの『敵鏡てきかがみ』だ。こそこそ歩き回っているのが見えるか? やつらの白目が見えるほどに接近してこないうちは安あん泰たいだ。見えたときが、わしのトランクを開くときだ」
ムーディは短く乾かわいた笑いを漏もらし、窓の下に置いた大きなトランクを指差した。七つの鍵かぎ穴あなが一列に並んでいる。いったい何が入っているのかと考えていると、ムーディが問いかけてきて、ハリーは突然現実に引き戻された。