「すると……ドラゴンのことを知ってしまったのだな?」
ハリーは言葉に詰まった。これを恐れていた――しかし、ハリーはセドリックにも言わなかったし、ムーディにも決して言いはしない。ハグリッドが規則を破ったなどと言うものか。
「大丈夫だ」ムーディは腰を下ろして、木製の義ぎ足そくを伸ばし、呻うめいた。「カンニングは三さん校こう対たい抗こう試じ合あいの伝統で、昔からあった」
「僕、カンニングしてません」ハリーは断言した。「ただ――偶ぐう然ぜん知ってしまったんです」
ムーディはニヤリとした。
「お若いの、わしは責めているわけではない。はじめからダンブルドアに言ってある。ダンブルドアはあくまでも高こう潔けつにしていればよいが、あのカルカロフやマクシームは、決してそういうわけにはいくまいとな。連中は、自分たちが知るかぎりのすべてを、代表選手に漏らすだろう。連中は勝ちたい。ダンブルドアを負かしたい。ダンブルドアも普通のヒトだと証明してみせたいのだ」
ムーディはまた乾いた笑い声を上げ、「魔法の目」がぐるぐる回った。あまりに速く回るので、ハリーは見ていて気分が悪くなってきた。
「それで……どうやってドラゴンを出し抜くか、何か考えはあるのか?」ムーディが聞いた。
「いえ」ハリーが答えた。
「フム。わしは教えんぞ」ムーディがぶっきらぼうに言った。「わしは、贔屓ひいきはせん。わしはな。おまえにいくつか、一般的なよいアドバイスをするだけだ。その第一は――自分の強みを生かす試合をしろ」
「僕、何にも強みなんてない」ハリーは思わず口走った。
「なんと」ムーディが唸った。「おまえには強みがある。わしがあると言ったらある。考えろ。おまえが得意なのは何だ?」
ハリーは気持を集中させようとした。僕の得意なものは何だっけ? ああ、簡単じゃないか、まったく――。
「クィディッチ」ハリーはのろのろと答えた。「それがどんな役に立つって――」
「そのとおり」ムーディはハリーをじっと見み据すえた。「魔法の目」がほとんど動かなかった。
「おまえは相当の飛び手だと、そう聞いた」
「うーん、でも……」ハリーも見つめ返した。「箒ほうきは許可されていません。杖つえだけだし――」
「二番目の一般的なアドバイスは」ムーディはハリーの言葉を遮さえぎり、大声で言った。「効果的で簡単な呪じゅ文もんを使い、自分に必要なものを手に入れる」
ハリーはきょとんとしてムーディを見た。自分に必要なものってなんだろう?
「さあ、さあ、いい子だ……」ムーディが囁ささやいた。「二つを結びつけろ……そんなに難しいことではない……」
ついに、閃ひらめいた。ハリーが得意なのは飛ぶことだ。ドラゴンを空中で出し抜く必要がある。それには、ファイアボルトが必要だ。そして、そのファイアボルトのために必要なのは――。