ハリーは「占うらない学がく」をサボッて練習を続けたかったが、ハーマイオニーは「数占かずうらない」の授業を欠席することをきっぱり断ことわった。ハーマイオニーなしで続けても意味がない。そこでハリーは、一時間以上、トレローニー先生の授業に堪たえなければならなかった。授業の半分は火星と土星のいま現在の位置関係が持つ意味の説明に費やされた。七月生まれの者が、突然痛々しい死を迎える危険性がある位置だという。
「ああ、そりゃいいや」とうとう癇癪かんしゃくを抑えきれなくなって、ハリーが大声で言った。「長引かないほうがいいや。僕、苦しみたくないから」
ロンが一瞬いっしゅん噴き出しそうな顔をした。ここ何日振りかで、ロンはたしかにハリーの目を見た。しかし、まだロンに対する怒りが治おさまらないハリーは、それに反応する気にならなかった。それから授業が終わるまで、ハリーは机の下で杖を使い、小さなものを呼び寄せる練習をした。ハエを一匹、自分の手の中に飛び込ませることに成功したが、自分の「呼び寄せ呪文」の威い力りょくなのかどうか自信がなかった――もしかしたら、ハエがばかだっただけなのかもしれない。
「占うらない学がく」のあと、ハリーは無理やり夕食を少しだけ飲み込み、先生たちに会わないように「透とう明めいマント」を使って、ハーマイオニーと一いっ緒しょに空あいた教室に戻った。練習は真夜中過ぎまで続いた。ピーブズが現れなかったら、もっと長くやれたかもしれない。ピーブズは、ハリーが物を投げつけてほしいのだと思ったというふりをして、部屋の向こうから椅子を投げつけはじめた。物音でフィルチがやってこないうちに、二人は急いで教室を出て、グリフィンドールの談だん話わ室しつに戻ってきた。ありがたいことに、そこにはもう誰もいなかった。