「さあ、落ち着いて」先生が言った。「冷静さを保ちなさい……手に負えなくなれば、事じ態たいを収める魔法使いたちが待機しています……大切なのは、ベストを尽くすことです。そうすれば、誰もあなたのことを悪く思ったりはしません……大丈夫ですか?」
「はい」ハリーは自分がそう言うのを聞いた。「はい、大丈夫です」
マクゴナガル先生は、禁じられた森の縁ふちを回り、ハリーをドラゴンのいる場所へと連れていった。しかし、囲い地の手前の木立に近づき、はっきり囲い地が見えるところまで来たとき、ハリーはそこにテントが張られているのに気づいた。テントの入口がこちら側を向いていて、ドラゴンはテントで隠されていた。
「ここに入って、ほかの代表選手たちと一緒にいなさい」マクゴナガル先生の声がやや震ふるえていた。「そして、ポッター、あなたの番を待つのです。バグマン氏が中にいます……バグマン氏が説明します――手続きを……。がんばりなさい」
「ありがとうございます」ハリーはどこか遠くで声がするような、抑よく揚ようのない言い方をした。先生はハリーをテントの入口に残して去った。ハリーは中に入った。
フラー・デラクールが片かた隅すみの低い木の椅子に座っていた。いつもの落ち着きはなく、青ざめて冷ひや汗あせをかいていた。ビクトール・クラムはいつもよりさらにむっつりしていた。これがクラムなりの不安の表し方なのだろうと、ハリーは思った。セドリックは往いったり来たりを繰り返していた。ハリーが入っていくと、セドリックはちょっと微ほほ笑えんだ。ハリーも微笑み返した。まるで微笑み方を忘れてしまったかのように、顔の筋肉が強こわばっているのを感じた。