その午後、ハリーは「占うらない学がく」の二時限続きの授業を十分楽しんだ。中身は相変わらず星せい座ざ表ひょうや予言だったが、ロンとの友情が元に戻ったので、何もかもがまたおもしろくなった。ハリーとロンが、自みずからの恐ろしい死を予測したことで、とても機き嫌げんのよかったトレローニー先生は、冥めい王おう星せいが日常生活を乱すさまざまな例を説明している間、二人がクスクス笑っていたことでたちまちイライラし出した。
「あたくし、こう思いますのよ」神しん秘ぴ的てきな囁ささやくような声を出しても、トレローニー先生の機嫌の悪さを隠せなかった。「あたくしたちの中の誰かが」――先生はさも意味ありげな目でハリーを見つめた――「あたくしが昨夜、水すい晶しょう玉だまで見たものを、ご自分の目でご覧になれば、それほど不ふ真ま面じ目めではいられないかもしれませんわ。あたくし、ここに座って、レース編あみに没ぼっ頭とうしておりましたとき、水晶玉に聞かなければという思いに駆かられまして立ち上がりましたの。玉の前に座り、水晶の底の底を覗のぞきましたら……あたくしを見つめ返していたものは何だったとお思い?」
「でっかいメガネをかけた醜みにくい年寄りのコウモリ?」ロンが息を殺して呟つぶやいた。
ハリーはまじめな顔をくずさないよう必死でこらえた。
「死ですのよ」
パーバティとラベンダーが、二人ともゾクッとしたように、両手でパッと口を押さえた。
「そうなのです」トレローニー先生がもったいぶって頷うなずいた。「それはやってくる。ますます身近に、それはハゲタカのごとく輪わを描き、だんだん低く……城の上に、ますます低く……」
トレローニー先生はしっかりハリーを見み据すえた。ハリーはあからさまに大きな欠伸あくびをした。