「ハーマイオニー!」ロンもはっと気づいた。「僕たちを、また『反へ吐ど』なんかに巻き込むつもりだろ!」
「違う、ちがう。そうじゃないの!」ハーマイオニーが慌あわてて言った。「それに、『反吐』って呼ぶんじゃないわよ。ロンったら――」
「名前を変えたとでもいうのか?」ロンがしかめっ面でハーマイオニーを見た。「それじゃ、こんどは、何になったんだい? 屋や敷しきしもべ妖よう精せい解かい放ほう戦せん線せんか? 厨房ちゅうぼうに押し入って、あいつらに働くのをやめさせるなんて、そんなの、僕はごめんだ――」
「そんなこと、頼みやしないわ!」ハーマイオニーはもどかしげに言った。「私、ついさっき、みんなと話すためにここに来たの。そしたら、見つけたのよ――ああ、とにかく来てよ、ハリー。あなたに見せたいの!」
ハーマイオニーはまたハリーの腕をつかまえ、巨大な果物皿の絵の前まで引っ張ってくると、人差し指を伸ばして大きな緑色の梨をくすぐった。梨はクスクス笑いながら身を捩よじり、急に大きな緑色のドアの取っ手に変わった。ハーマイオニーは取っ手をつかみ、ドアを開け、ハリーの背中をぐいと中に押し込んだ。
天井の高い巨大な部屋が、ほんの一瞬いっしゅんだけ見えた。上の階にある大おお広ひろ間まと同じくらい広く、石いし壁かべの前にずらりと、ピカピカの真鍮しんちゅうの鍋なべやフライパンが山積みになっている。部屋の奥には大きなレンガの暖だん炉ろがあった。次の瞬間しゅんかん、部屋の真ん中から、何か小さな物が、ハリーに向かって駆かけてきた。キーキー声で叫さけんでいる。
「ハリー・ポッターさま! ハリー・ポッター!」
キーキー声のしもべ妖よう精せいが勢いよく鳩みず尾おちにぶつかり、ハリーは息が止まりそうだった。しもべ妖精は、ハリーの肋ろっ骨こつが折れるかと思うほど強く抱き締めた。