「ウィンキー? ウィンキーもここにいるの?」ハリーが聞いた。
「さようでございますとも!」ドビーはハリーの手を取り、四つの長い木のテーブルの間を引っ張って厨房ちゅうぼうの奥に連れていった。テーブルの脇わきを通りながら、それぞれがちょうど、大おお広ひろ間まの各寮かくりょうのテーブルの真下に置かれていることにハリーは気づいた。いまは夕食も終わったので、どのテーブルにも食べ物はなかった。しかし、一時間前は食べ物の皿がぎっしり置かれ、天井からそれぞれの寮のテーブルに送られたのだろう。
ドビーがハリーを連れてそばを通ると、少なくとも百人の小さなしもべ妖精が、厨房のあちこちで会え釈しゃくしたり、頭を下げたり、膝ひざをちょんと折って宮きゅう廷てい風ふうの挨あい拶さつをした。全員が同じ格かっ好こうをしている。ホグワーツの紋章もんしょうが入ったキッチンタオルを、ウィンキーが以前に着ていたように、トーガ風に巻きつけて結んでいるのだ。
ドビーはレンガ造りの暖だん炉ろの前で立ち止まり、指差しながら言った。
「ウィンキーでございます!」
ウィンキーは暖炉脇わきの丸椅子に座っていた。ウィンキーはドビーと違って、洋服漁あさりをしなかったらしい。洒落しゃれた小さなスカートにブラウス姿で、それに合ったブルーの帽ぼう子しをかぶっている。耳が出るように帽子には穴が開いていた。しかし、ドビーの珍妙ちんみょうなごた混ぜの服は清せい潔けつで手入れが行き届き、新品のように見えるのに、ウィンキーのほうは、まったく洋服の手入れをしていない。ブラウスの前はスープのシミだらけで、スカートには焼け焦こげがあった。
「やあ、ウィンキー」ハリーが声をかけた。ウィンキーは唇くちびるを震ふるわせた。そして泣き出した。クィディッチ・ワールドカップのときと同じように、大きな茶色の目から涙が溢あふれ、滝のように流れ落ちた。
「かわいそうに」ロンと一いっ緒しょに、ハリーとドビーについて厨房ちゅうぼうの奥までやってきたハーマイオニーが言った。「ウィンキー、泣かないで。お願いだから……」
しかし、ウィンキーはいっそう激はげしく泣き出した。ドビーのほうは、逆にハリーにニッコリ笑いかけた。