「それで、ウィンキー、ダンブルドア校長先生は、あなたにはいくら払っているの?」ハーマイオニーがやさしく聞いた。
ハーマイオニーがウィンキーを元気づけるために聞いたつもりだったとしたら、とんでもない見込み違いだった。ウィンキーは泣きやんだ。しかし、顔中グショグショにしながら、床に座り直し、巨大な茶色の目でハーマイオニーを睨にらみ、急に怒り出した。
「ウィンキーは不ふ名めい誉よなしもべ妖よう精せいでございます。でも、ウィンキーはまだ、お給料をいただくようなことはしておりません!」ウィンキーはキーキー声を上げた。「ウィンキーはそこまで落ちぶれてはいらっしゃいません! ウィンキーは自由になったことをきちんと恥じております!」
「恥じる?」ハーマイオニーは呆あっ気けにとられた。「でも――ウィンキー、しっかりしてよ! 恥じるのはクラウチさんのほうよ。あなたじゃない! あなたは何にも悪いことをしてないし、あの人はほんとにあなたに対してひどいことを――」
しかし、この言葉を聞くと、ウィンキーは帽ぼう子しの穴から出ている耳を両手でぴったり押さえつけ、一言も聞こえないようにして叫さけんだ。
「あたしのご主人さまを、あなたさまは侮ぶ辱じょくなさらないのです! クラウチさまを、あなたさまは侮辱なさらないのです! お嬢じょうさま、クラウチさまはよい魔法使いでございます。クラウチさまは悪いウィンキーをクビにするのが正しいのでございます!」
「ウィンキーはなかなか適てき応おうできないのでございます。ハリー・ポッター」ドビーはハリーに打ち明けるようにキーキー言った。「ウィンキーは、もうクラウチさんに縛しばられていないということを忘れるのでございます。何でも言いたいことを言ってもいいのに、ウィンキーはそうしないのでございます」
「屋や敷しきしもべは、それじゃ、ご主人さまのことで、言いたいことが言えないの?」ハリーが聞いた。
「言えませんとも。とんでもございません」ドビーは急に真ま顔がおになった。「それが、屋敷しもべ妖精制度の一部でございます。わたくしどもはご主人さまの秘ひ密みつを守り、沈ちん黙もくを守るのでございます。主君の家族の名めい誉よを支え、けっしてその悪口を言わないのでございます――でもダンブルドア校長先生はドビーに、そんなことにこだわらないとおっしゃいました。ダンブルドア校長先生は、わたくしどもに――あの――」