ドビーは急にそわそわして、ハリーにもっと近くに来るように合図した。ハリーが身を屈かがめた。ドビーが囁ささやいた。
「ダンブルドアさまは、わたしどもがそう呼びたければ――老おいぼれ偏へん屈くつじじいと呼んでもいいとおっしゃったのでございます!」ドビーは畏おそれ多いという顔でクスッと笑った。「でも、ドビーはそんなことはしたくないのでございます。ハリー・ポッター」
ドビーのしゃべり方が普通になり、耳がパタパタするほど強く首を振った。
「ドビーはダンブルドア校長先生がとても好きでございます。校長先生のために秘密を守るのは誇ほこりでございます」
「でも、マルフォイ一家については、もう何を言ってもいいんだね?」ハリーはニヤッと笑いながら聞いた。
ドビーの巨大な目に、ちらりと恐怖の色が浮かんだ。
「ドビーは――ドビーはそうだと思います」自信のない言い方だった。そして小さな肩を怒いからせ、こう言った。「ドビーはハリー・ポッターに、このことをお話しできます。ドビーの昔のご主人さまたちは――ご主人さまたちは――悪い闇やみの魔法使いでした!」
ドビーは自分の大だい胆たんさに恐れをなして、全身震ふるえながらその場に一瞬いっしゅん立ちすくんだ――それからすぐ近くのテーブルに駆かけていき、思い切り頭を打ちつけながら、キーキー声で叫さけんだ。
「ドビーは悪い子! ドビーは悪い子!」
ハリーはドビーのネクタイの首くび根ねっこのところをつかみ、テーブルから引き離した。
「ありがとうございます。ハリー・ポッター。ありがとうございます」ドビーは頭を撫なでながら、息もつかずに言った。
「ちょっと練習する必要があるね」ハリーが言った。