「かわいそうな、かわいそうなご主人さま。ご主人さまを助けるウィンキーがもういない!」
それ以上はウィンキーの口から、ちゃんとした言葉は一言も聞けなかった。みんな、ウィンキーを泣くがままにして、紅茶を飲み終えた。ドビーは、その間、自由な屋や敷しき妖よう精せいの生活や、給料をどうするつもりかの計画を楽しそうに語り続けた。
「ドビーはこの次にセーターを買うつもりです。ハリー・ポッター!」ドビーは裸はだかの胸を指差しながら、幸せそうに言った。
「ねえ、ドビー」ロンはこの屋敷妖精がとても気に入った様子だ。「ママが今年のクリスマスに僕に編あんでくれるヤツ、君にあげるよ。僕、毎年一着もらうんだ。君、栗色は嫌いじゃないだろう?」
ドビーは大喜びだった。
「ちょっと縮ちぢめないと君には大きすぎるかもしれないけど」ロンが言った。「でも、君のティーポット・カバーとよく合うと思うよ」
帰り仕じ度たくを始めると、周りのしもべ妖精がたくさん寄ってきて、寮りょうに持ち帰ってくださいと夜食のスナックを押しつけた。ハーマイオニーは、しもべ妖精たちがひっきりなしにお辞じ儀ぎをしたり、膝ひざを折って挨あい拶さつしたりする様子を、苦痛そうに見ながら断ことわったが、ハリーとロンは、クリームケーキやパイをポケット一杯に詰め込んだ。
「どうもありがとう!」ドアの周りに集まっておやすみなさいを言うしもべ妖精たちに、ハリーは礼を言った。「ドビー、またね!」
「ハリー・ポッター……ドビーがいつかあなたさまをお訪ねしてもよろしいでしょうか?」
ドビーがためらいながら言った。
「もちろんさ」ハリーが答えると、ドビーはニッコリした。