「あのさ」ロン、ハーマイオニー、ハリーが厨房ちゅうぼうをあとにし、玄げん関かんホールへの階段を上りはじめたとき、ロンが言った。「僕、これまでずーっと、フレッドとジョージのこと、ほんとうにすごいと思ってたんだ。厨房から食べ物をくすねてくるなんてさ――でも、そんなに難しいことじゃなかったんだよね? しもべ妖精たち、差し出したくてウズウズしてるんだ!」
「これは、あの妖精たちにとって、最高のことが起こったと言えるんじゃないかしら」
大だい理り石せきの階段に戻る道を先頭に立って歩きながら、ハーマイオニーが言った。
「つまり、ドビーがここに働きにきたということが。ほかの妖精たちは、ドビーが自由の身になって、どんなに幸せかを見て、自分たちも自由になりたいと徐じょ々じょに気づくんだわ!」
「ウィンキーのことをあんまりよく見なければいいけど」ハリーが言った。
「あら、あの子は元気になるわ」そうは言ったものの、ハーマイオニーは少し自信がなさそうだった。「ショックさえ和やわらげば、ホグワーツにも慣れるでしょうし、あんなクラウチなんて人、いないほうがどんなにいいかわかるわよ」
「ウィンキーはクラウチのこと好きみたいだな」ロンがモゴモゴ言った(ちょうどクリームケーキを頬ほお張ばったところだった)。
「でも、バグマンのことはあんまりよく思ってないみたいだね?」ハリーが言った。「クラウチは家の中ではバグマンのことをなんて言ってるのかなぁ?」
「きっと、あんまりいい部長じゃない、とか言ってるんでしょ……はっきり言って……それ、当たってるわよね?」
「僕は、クラウチなんかの下で働くより、バグマンのほうがまだいいな」ロンが言った。
「少なくとも、バグマンにはユーモアのセンスってもんがある」
「それ、パーシーには言わないほうがいいわよ」ハーマイオニーがちょっと微ほほ笑えみながら言った。
「うん、まあね。パーシーは、ユーモアのわかる人の下なんかで働きたくないだろうな」こんどはチョコレート・エクレアを頬張りながらロンが言った。「ユーモアってやつが、ドビーのティーポット・カバーをかぶって目の前で裸はだかで踊おどったって、パーシーは気がつきゃしないよ」