ハリーの内臓が戻ってきた。いなくなっていた間に、どこかで鉛なまりでも詰め込んできたような感じだ。
夕食のことなどすっかり忘れて、ハリーはグリフィンドール塔とうにのろのろと戻っていった。一歩歩くごとに、チョウの声が耳の中でこだました。
「セドリック――セドリック・ディゴリーよ」
ハリーはセドリックが好きになりかけていた。一度クィディッチでハリーを破ったことも、ハンサムなことも、人気があることも、ほとんど全校生が代表選手としてセドリックを応おう援えんしていることも、大目に見ようと思いはじめていた。しかしいま、突然、ハリーは気づいた。セドリックは、役にも立たない、かわいいだけの、頭は鳥の脳みそぐらいしかないやつだ。
「フェアリー・ライト豆電球」ハリーはのろのろと言った。合言葉は昨日から変わっていた。
「そのとおりよ、坊や!」「太った婦人レディ」は歌うように言いながら、真新しいティンセルのヘアバンドをきちんと直し、パッと開いてハリーを通した。
談だん話わ室しつに入り、ハリーはぐるりと見回した。驚いたことに、ロンが隅すみっこで、血の気のない顔をして座り込んでいた。ジニーがそばに座って、低い声で、慰なぐさめるように話しかけていた。
「ロン、どうした?」ハリーは二人のそばに行った。
ロンは、恐怖の表情で呆ぼう然ぜんとハリーを見上げた。
「僕、どうしてあんなことやっちゃったんだろう?」ロンは興こう奮ふんしていた。「どうしてあんなことをする気になったのか、わからない!」
「何を?」ハリーが聞いた。
「ロンは――あの――フラー・デラクールに、一いっ緒しょにダンスパーティに行こうって誘ったの」ジニーが答えた。つい口元が緩ゆるみそうになるのを必死でこらえているようだったが、それでも、ロンの腕を慰なぐさめるように撫なでていた。