「あいつ、嘘うそついてる」ロンはその後ろ姿を見ながらきっぱりと言った。
「嘘じゃないわ」ジニーが静かに言った。
「じゃ、誰と?」ロンが声を尖とがらせた。
「言わないわ。あたし、関係ないもの」ジニーが言った。
「よーし」ロンはかなりまいっているようだった。「こんなこと、やってられないぜ。ジニー、おまえがハリーと行けばいい。僕はただ――」
「あたし、だめなの」ジニーも真っ赤になった。「あたし――あたし、ネビルと行くの。ハーマイオニーに断ことわられたあと、あたしを誘ったの。あたし……だって……誘いを受けないと、ダンスパーティには行けないと思ったの。まだ四年生になっていないし」ジニーはとても惨みじめそうだった。「あたし、夕食にいくわ」そう言うと、ジニーは立ち上がって、うなだれたまま、肖しょう像ぞう画がの穴のほうに歩いていった。
ロンは目を丸くしてハリーのほうを見た。
「あいつら、どうなっちゃってんだ?」ロンがハリーに問いかけた。
しかし、ハリーのほうはちょうど肖像画の穴をくぐってきたパーバティとラベンダーを見つけたところだった。思い切って行動を起こすなら、いまだ。
「ここで、待ってて」ロンにそう言うと、ハリーは立ち上がってまっすぐにパーバティのところに行き、聞いた。「パーバティ? 僕とダンスパーティに行かない?」
パーバティはクスクス笑いの発作に襲おそわれた。ハリーは、ローブのポケットに手を突っ込み、うまくいくように指でおまじないをしながら、笑いが収まるのを待った。
「ええ、いいわよ」パーバティはやっとそう言うと、見る見る真っ赤になった。
「ありがとう」ハリーはほっとした。「ラベンダー――ロンと一いっ緒しょに行かない?」
「ラベンダーはシェーマスと行くの」パーバティが言った。そして二人でますますクスクス笑いをした。ハリーはため息をついた。
「誰か、ロンと行ってくれる人、知らない?」ロンに聞こえないように声を落として、ハリーが聞いた。
「ハーマイオニー・グレンジャーは?」パーバティが言った。
「ほかの人と行くんだって」
パーバティは驚いた顔をした。「へぇぇぇっ……いったい誰?」パーバティは興きょう味み津しん々しんだ。
ハリーは肩をすぼめて言った。「全然知らない。それで、ロンのことは?」
「そうね……」パーバティはちょっと考えた。「わたしの妹なら……パドマだけど……レイブンクローの。よかったら、聞いてみるけど」
「うん。そうしてくれたら助かる。結果を知らせてくれる?」ハリーが言った。
ハリーはロンのところに戻った。このダンスパーティは、それほどの価値もないのに、余計な心配ばかりさせられると思った。そして、パドマ・パチルの鼻が、顔の真んまん中についていますようにと、心から願った。