ハリー
おめでとう。ホーンテールをうまく出し抜いたんだね。「炎ほのおのゴブレット」に君の名前を入れた誰かさんは、きっといまごろがっかりしているだろう! わたしは「結けつ膜まく炎えんの呪のろい」を使えと言うつもりだった。ドラゴンのいちばんの弱点は眼めだからね――。
「クラムはそれをやったのよ!」ハーマイオニーが囁ささやいた。
――だが、君のやり方のほうがよかった。感心したよ。
しかし、ハリー、これで満足してはいけない。まだ一つしか課題をこなしていないのだ。試合に君を参加させたのが誰であれ、君を傷きずつけようと企んでいるなら、まだまだチャンスがあるわけだ。油ゆ断だんせずに、しっかり目を開けて――とくに、わたしたちが話題にしたあの人物が近くにいる間は――トラブルに巻き込まれないよう十分気をつけなさい。
何か変わったことがあったら、必ず知らせなさい。連絡を絶やさないように。
シリウスより
「ムーディにそっくりだ」手紙をまたローブにしまい込みながら、ハリーがひっそりと言った。「『油断大敵!』って。まるで、僕が目をつぶったまま歩いて、壁かべにぶつかるみたいじゃないか……」
「だけど、シリウスの言うとおりよ、ハリー」ハーマイオニーが言った。「たしかにまだ、二つも課題が残ってるわ。ほんと、あの卵たまごを調べるべきよ。ね。そしてあれがどういう意味なのか、考えはじめなきゃ……」
「ハーマイオニー、まだずーっと先じゃないか!」ロンがピシャリと言った。「チェスしようか、ハリー?」
「うん、オッケー」そう答えはしたが、ハーマイオニーの表情を読み取って、ハリーが言った。「いいじゃないか。こんなやかましい中で、どうやって集中できる? この騒ぎじゃ、卵の音だって聞こえやしないだろ」
「ええ、それもそうね」ハーマイオニーはため息をつき、座り込んで二人のチェスを観戦した。向こう見ずで勇ゆう敢かんなポーンを二ふた駒こまと、非常に乱暴なビショップを一駒使って、ロンが王手をかける、わくわくするようなチェックメイトで試合は最さい高こう潮ちょうに達した。