クリスマスの朝、ハリーは突然目覚めた。なぜ急に意識がはっきりしたのだろうと不思議に思いながら、ハリーは目を開けた。すると、大きな丸い緑の目をした何かが暗くら闇やみの中からハリーを見つめ返していた。その何かは、あまりに近くにいたので鼻と鼻がくっつきそうだった。
「ドビー!」ハリーが叫さけび声を上げた。慌あわてて妖よう精せいから離れようとした拍ひょう子しに、ハリーは危うくベッドから転げ落ちそうになった。「やめてよ。びっくりするじゃないか!」
「ドビーはごめんなさいなのです!」ドビーは長い指を口に当てて後ろに飛び退のきながら、心配そうに言った。「ドビーは、ただ、ハリー・ポッターに『クリスマスおめでとう』を言って、プレゼントを差し上げたかっただけなのでございます! ハリー・ポッターは、ドビーがいつかハリー・ポッターに会いにきてもよいとおっしゃいました!」
「ああ、わかったよ」心臓のドキドキは元に戻ったが、ハリーはまだ息を弾はずませていた。
「ただ――ただ、これからは、突っついて起こすとか何とかしてよね。あんなふうに僕を覗のぞき込まないで……」
ハリーは四本柱のベッドに張り巡らされたカーテンを開け、ベッド脇わきの小机からメガネを取ってかけた。ハリーが叫んだので、ロン、シェーマス、ディーン、ネビルも起こされてしまっていた。四人とも自分のベッドのカーテンの隙すき間まから、どろんとした目、くしゃくしゃ頭で覗いている。
「誰かに襲おそわれたのか、ハリー?」シェーマスが眠そうに聞いた。
「違うよ。ドビーなんだ」ハリーがモゴモゴ答えた。「まだ眠っててよ」
「ンー……プレゼントだ!」シェーマスは自分のベッドの足あし下もとに大きな山ができているのを見つけた。ロン、ディーン、ネビルも、どうせ起きてしまったのだから、プレゼントを開けるのに取りかかろうということになった。ハリーはドビーのほうに向き直った。ドビーは、ハリーを驚かせてしまったことがまだ気がかりだという顔で、こんどはハリーのベッド脇におどおどと立っていた。ティーポット・カバーを帽ぼう子しのようにかぶり、そのてっぺんの輪わになったところに、クリスマス飾りのボールを結びつけている。