「エーッ、三時間も要いるのかよ?」ロンが信じられないという顔でハーマイオニーを見た。一いっ瞬しゅん気を抜いたツケが回ってきた。ジョージが投げた大きな雪玉が、ロンの顔を横からバシッと強打した。
「誰と行くんだよー?」ハーマイオニーの後ろからロンが叫さけんだが、ハーマイオニーはただ手を振って、石段を上がり城へと消えた。
今日はダンスパーティでご馳ち走そうが出るので、午後のクリスマス・ティーはなかった。七時になると、もう雪玉の狙いを定めることもできなくなってきたので、みんな雪合戦をやめ、ぞろぞろと談話室に戻った。「太った婦人レディ」は下の階から来た友人のバイオレットと一いっ緒しょに額がくに納まり、二人ともほろ酔よい機き嫌げんだった。絵の下のほうに、空からになったウィスキー・ボンボンの箱がたくさん散らばっていた。
「『レアリー・ファイト。電でん豆まめ球きゅう』。そうだったわね!」
「太った婦人レディ」は合言葉を聞くとクスクス笑って、パッと開き、みんなを中に入れた。
ハリー、ロン、シェーマス、ディーン、ネビルは、寝しん室しつでドレスローブに着き替がえ、みんな自意識過か剰じょうになって照れていたが、いちばん意識していたのはロンだった。部屋の隅すみの姿すがた見みに映る自分の姿を眺ながめて呆ぼう然ぜんとしていた。どう見ても、ロンのローブが女性のドレスに見えるのは、どうしようもない事実だった。少しでも男っぽく見せようと躍やっ起きになって、ロンは襟えりと袖そで口ぐちのレースに「切せつ断だんの呪じゅ文もん」をかけた。これがかなりうまくいき、少なくともロンは「レースなし」の姿になった。ただし、呪文の詰めが甘く、襟や袖口が惨みじめにボロボロのまま、みんなと階下に下りていった。
「君たち二人とも、どうやって同学年一番の美女を獲かく得とくしたのか、僕、いまだにわからないなぁ」ディーンがぼそぼそ言った。
「動物的魅み力りょくってやつだよ」ロンは、ボロボロ袖口の糸を引っ張りながら、憂ゆう鬱うつそうに言った。