そういえば、ハリーは、クラムが話すのを実際に聞いたことはなかった。しかし、いまは確かに話している。しかも、夢中になって。
「ええ、ヴぉくたちのところにも城があります。こんなに大きくはないし、こんなに居い心ごこ地ちよくないです、と思います」クラムはハーマイオニーに話していた。「ヴぉくたちのところは四階建です。そして、魔法を使う目的だけに火を熾おこします。しかし、ヴぉくたちの校庭はここよりも広いです――でも冬には、ヴぉとんど日光がないので、ヴぉくたちは楽しんでいないです。しかし、夏には、ヴぉくたちは毎日飛んでいます。湖や山の上を――」
「これ、これ、ビクトール!」カルカロフは笑いながら言ったが、冷たい目は笑っていない。「それ以上は、もう明かしてはいけないよ。さもないと、君のチャーミングなお友達に、わたしたちの居場所がはっきりわかってしまう!」
ダンブルドアが微ほほ笑えんだ。目がキラキラしている。
「イゴール、そんなに秘ひ密みつ主しゅ義ぎじゃと……誰も客に来てほしくないのかと思ってしまうじゃろうが」
「はて、ダンブルドア」カルカロフは黄色い歯をむき出せるだけむき出して言った。
「我々は、それぞれ、自みずからの領地を守ろうとするのではないですかな? 我々に託たくされた学びの殿でん堂どうを、意い固こ地じなまでにガードしているのでは? 我々のみが自らの学校の秘密を知っているという誇ほこりを持ち、それを守ろうとするのは、正しいことではないですかな?」
「おお、わしはホグワーツの秘密すべてを知っておるなどと夢にも思わんぞ、イゴール」ダンブルドアは和わ気き藹あい々あいと話した。「たとえば、つい今朝のことじゃがの、トイレに行く途と中ちゅう、曲がるところを間違えての、これまでに見たこともない、見事に均きん整せいの取れた部屋に迷い込んでしもうた。そこにはほんにすばらしい、おまるのコレクションがあっての。もっと詳くわしく調べようと、もう一度行ってみると、その部屋は跡あと形かたもなかったのじゃ。しかし、わしは、これからも見み逃のがさぬよう気をつけようと思うておる。もしかすると、朝の五時半にのみ近づけるのかもしれんて。さもなければ、上弦じょうげん、下か弦げんの月のときのみ現れるのか――いや、求めるものの膀ぼう胱こうが、ことさらに満ちているときかもしれんのう」