ハリーは食べかけのグラーシュシチューの皿に、プーッと吹き出してしまった。パーシーは顔をしかめたが、間違いなく――とハリーは思った――ダンブルドアがハリーに向かってちょこんとウィンクした。
一方、フラー・デラクールはロジャー・デイビースに向かって、ホグワーツの飾りつけを貶けなしていた。
「こんなの、なーんでもありませーん」大おお広ひろ間まの輝かがやく壁かべをぐるりと見回し、軽けい蔑べつしたようにフラーが言った。「ボーバトンの宮殿きゅうでんでは、クリースマスに、お食事のあいーだ、周りには、ぐるーりと氷の彫刻ちょうこくが立ちまーす。もちろーん、彫刻は、融とけませーん……まるでおーきなダイヤモンドの彫刻のようで、ピーカピカ輝いて、あたりを照らしていまーす。そして、お食事は、とーてもすばらしいでーす。そして、森のニンフの聖せい歌か隊たいがいて、お食事の間、歌を奏かなでまーす。こんな、見苦しーい鎧よろいなど、わたーしたちの廊ろう下かにはありませーん。もしーも、ポルターガイストがボーバトンに紛まぎれ込むようなことがあーれば、追い出されまーす。コムサこんなふうに!」
フラーは我が慢まんならないというふうに、テーブルをピシャリと叩たたいた。
ロジャー・デイビースは、魂たましいを抜かれたような顔で、フラーが話すのを見つめていた。口に運んだはずのフォークも、頬ほおに当たってばかりいる。デイビースはフラーの顔を見つめるのに忙いそがしくて、フラーの話など一言もわかっていないのではないか、とハリーは思った。
「そのとおりだ」デイビースは慌あわててそう言うと、フラーのまねをして、テーブルをピシャリと叩いた。「コムサ! うん」
ハリーは大広間を見回した。ハグリッドが教職員テーブルの一つに座っている。以前に着たことがある、あの野や暮ぼったい毛のモコモコした茶色の背せ広びろをまた着込んでいる。そして、こちらの審しん査さ員いんテーブルをじっと見つめていた。ハグリッドが小さく手を振るのが見えたので、ハリーはあたりを見回した。マダム・マクシームが手を振り返している。指のオパールが蝋ろう燭そくの光に煌きらめいた。