「ちょっと歩こうか」ロンがハリーにボソボソッと言った。「パーシーから離れよう……」
飲み物を取りにいくふりをしてハリーとロンはテーブルを離れ、ダンスフロアの端はしを歩き、玄げん関かんホールに抜け出した。正面の扉とびらが開けっぱなしになっていた。正面の石段を下りていくと、バラの園に飛び回る妖よう精せいの光が、瞬まばたき、煌きらめいた。階段を下りると、そこは潅かん木ぼくの茂みに囲まれ、くねくねとした散歩道がいくつも延のび、大きな石の彫刻が立ち並んでいた。ハリーの耳に、噴水のような水音が聞こえてきた。あちらこちらに彫刻を施したベンチが置かれ、人が座っていた。ハリーとロンはバラの園に延びる小道の一つを歩き出したが、あまり歩かないうちに、聞き覚えのある不快な声が聞こえてきた。
「……我わが輩はいは何も騒ぐ必要はないと思うが、イゴール」
「セブルス、何も起こっていないふりをすることはできまい!」カルカロフが盗み聞きを恐れるかのように、不安げな押し殺した声で言った。「この数ヵ月の間に、ますますはっきりしてきた。わたしは真剣に心配している。否定できることではない――」
「なら、逃げろ」スネイプが素そっ気けなく言った。「逃げろ。我輩が言い訳わけを考えてやる。しかし、我輩はホグワーツに残る」
スネイプとカルカロフが曲り角にさしかかった。スネイプは杖つえを取り出していた。意地の悪い表情をむき出しにして、スネイプはバラの茂みをバラバラに吹き飛ばしていた。あちこちの茂みから悲ひ鳴めいが上がり、黒い影が飛び出してきた。
「ハッフルパフ、十点減点だ、フォーセット!」スネイプが唸うなった。女の子がスネイプの脇わきを走り抜けていくところだった。「さらに、レイブンクローも十点減点だ、ステビンズ!」男の子が女の子のあとを追って駆かけていくところだった。
「ところでおまえたち二人は何をしているのだ?」小道の先にハリーとロンの姿を見つけたスネイプが聞いた。カルカロフが、二人がそこに立っているのを見て、わずかに動どう揺ようしたのを、ハリーは見み逃のがさなかった。カルカロフの手が神経質にヤギ鬚ひげに伸び、指に巻きつけはじめた。