困ったことに、クリスマスを境に、二月二十四日はぐっと間近に迫せまって見えた。それなのに、ハリーはまだ何も金の卵の謎なぞを解き明かす努力をしていない。ハリーは、寮りょうの寝しん室しつに上がるたびに、トランクから卵を取り出し、開けて、何かわかるのではないかと願いながら一いっ心しんにその音を聞くことにした。三十丁の鋸のこぎり楽がっ器きが奏かなでる音以外に何か思いつかないかと、必死で考えたが、こんな音はいままで聞いたことがない。
ハリーは卵を閉じ、勢いよく振って、何か音が変化しているかとまた開けてみるのだが、何の変化もない。卵に質問してみたり、泣き声に負けないくらい大声を出してみたりしたが、何も起こらない。ついには卵を部屋の向こうに放り投げた――それでどうにかなると思ったわけではないが。
セドリックがくれたヒントを忘れたわけではなかった。しかし、いまは、セドリックに対して打ち解けない気持だ。できればセドリックの助けは借りたくないという思いが強かった。セドリックが本気でハリーに手を貸したいのなら、もっとはっきり教えてくれたはずだ。僕は、セドリックに第一の課題そのものズバリを教えたじゃないか――セドリックの考える公正なお返しは、僕に「風呂に入れ」と言うだけなのか。いいとも。そんなくだらない助けなら僕は要いらない――どっちにしろ、チョウと手をつないで廊ろう下かを歩いているやつの手助けなんか、要るもんか。
そうこうするうちに、新学期の第一日目が始まり、ハリーは授業に出かけた。教科書や羊よう皮ひ紙し、羽根ペンはいつものように重かったが、そればかりでなく、気がかりな卵が胃に重くのしかかり、まるで卵までも持ち歩いているかのようだった。