グラブリー‐プランク先生は聞こえないふりをした。ボーバトンの馬が寒さに身を寄せ合って立っている囲い地を過ぎ、禁じられた森の端はたに立つ一本の木のところへ、先生はみんなを連れてきた。その木には、大きな美しい一角獣ユニコーンが繋つながれていた。
「おおおおおー!」一角獣を見ると、大勢の女子生徒が思わず声を上げた。
「まあ、なんてきれいなんでしょう!」ラベンダー・ブラウンが囁ささやくように言った。「あの先生、どうやって手に入れたのかしら? 捕まえるのはとっても難しいはずよ!」
一角獣ユニコーンの輝かがやくような白さに、周りの雪さえも灰色に見えるほどだった。一角獣は金色の蹄ひづめで神経質に地を掻かき、角のある頭かしらをのけ反らせていた。
「男の子は下がって!」グラブリー‐プランク先生は腕をさっと伸ばし、ハリーの胸のあたりでがっしり行く手を遮さえぎり、大声で言った。「一角獣は女性の感触かんしょくのほうがいいんだよ。女の子は前へ。気をつけて近づくように。さあ、ゆっくりと……」
先生も女子生徒もゆっくりと一角獣に近づき、男の子は囲い地の柵さくのそばに立って眺ながめていた。
グラブリー‐プランク先生にこちらの声が届かなくなるとすぐ、ハリーがロンに言った。
「ハグリッドはどこが悪いんだと思う? まさかスクリュートに――?」
「襲おそわれたと思ってるなら、ポッター、そうじゃないよ」マルフォイがねっとりと言った。「ただ、恥ずかしくて、あのでかい醜みにくい顔が出せないだけさ」
「何が言いたいんだ?」ハリーが鋭するどい声で聞き返した。
マルフォイはローブのポケットに手を突っ込み、折り畳たたんだ新聞を一枚引っ張り出した。
「ほら」マルフォイが言った。「こんなことを君に知らせたくはないけどね、ポッター……」