ハリーが新聞をひったくり、広げて読むのを、マルフォイはニタニタしながら見ていた。ロン、シェーマス、ディーン、ネビルはハリーの後ろから新聞を覗のぞき込んで一いっ緒しょに読んだ。新聞記事の冒ぼう頭とうに、いかにも胡う散さん臭くさそうに見えるハグリッドの写真が載のっていた。
ダンブルドアの「巨大な」過あやまち
本紙の特とく派は員いん、リータ・スキーターは、「ホグワーツ魔ま法ほう魔ま術じゅつ学がっ校こうの変人校長、アルバス・ダンブルドアは、常に、教職員に、あえて問題のある人選をしてきた」との記事を寄せた。
本年九月、校長は、「マッド‐アイ」と呼ばれる、呪のろい好きで悪名あくみょう高い元「闇やみ祓ばらい」の、アラスター・ムーディを、「闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ」の教師として迎えた。この人選は、魔ま法ほう省しょうの多くの役人の眉まゆをひそめさせた。ムーディは身近で急に動く者があれば、誰かれ見境なく攻こう撃げきする習性があるからだ。そのマッド‐アイ・ムーディでさえ、ダンブルドアが「魔ま法ほう生せい物ぶつ飼し育いく学がく」の教師に任命した半ヒトに比べれば、まだ責任感のあるやさしい人に見える。
三年生のときホグワーツを退校処分になったと自みずから認めるルビウス・ハグリッドは、それ以来、ダンブルドアが確保してくれた森番としての職を享受きょうじゅしてきた。ところが、昨年、ハグリッドは、校長に対する不ふ可か思し議ぎな影響力を行使し、あまたの適てき任にん候こう補ほを尻しり目めに、「魔法生物飼育学」の教師という座まで射い止とめてしまった。
危険を感じさせるまでに巨大で、獰どう猛もうな顔つきのハグリッドは、新たに手にした権力を利用し、恐ろしい生物を次々と繰り出して、自分が担当する生徒を脅おどしている。ダンブルドアの見て見ぬふりをよいことに、ハグリッドは、多くの生徒が「怖こわいのなんのって」と認めるところの授業で、何人かの生徒を負ふ傷しょうさせている。
「僕はヒッポグリフに襲おそわれましたし、友達のビンセント・クラッブは、レタス喰い虫にひどく噛かまれました」四年生のドラコ・マルフォイはそう言う。「僕たちはみんな、ハグリッドをとても嫌っています。でも怖くて何も言えないのです」とも語った。
しかし、ハグリッドは威い嚇かく作戦の手を緩ゆるめる気はさらさらない。先月、「日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん」の記者の取材に答えて、ハグリッドは、「尻しっ尾ぽ爆ばく発はつスクリュート」と自みずから命名した、マンティコアと火ひ蟹がにとをかけ合わせた危険極きわまりない生物を飼し育いくしていると認めた。魔法生物の新種を創つくり出すことは、周知のとおり「魔ま法ほう生せい物ぶつ規き制せい管かん理り部ぶ」が常日頃厳きびしく監かん視ししている行為だ。どうやらハグリッドは、そんな些さ細さいな規制など自分にはかかわりなしと考えているらしい。
「俺おれはただちょいと楽しんでいるだけだ」ハグリッドはそう言って、慌あわてて話題を変えた。
「日刊予言者新聞」は、さらに、極きわめつきの、ある事実をつかんでいる。ハグリッドは、純じゅん血けつの魔法使い――そのふりをしてきたが――ではなかった。しかも、純粋じゅんすいのヒトですらない。母親は、本紙のみがつかんだところによれば、なんと、女巨人のフリドウルファで、その所在は、いま現在不明である。
血に飢うえた狂暴な巨人たちは、前世紀に仲間内の戦争で互いに殺し合い、絶滅寸前となった。生き残ったほんの一握りの巨人たちは、「名前を言ってはいけないあの人」に与くみし、恐怖支配時代に起きたマグル大たい量りょう殺さつ戮りく事件じけんの中でも最悪の事件にかかわっている。
「名前を言ってはいけないあの人」に仕つかえた巨人の多くは、暗黒の勢力と対決した「闇やみ祓ばらい」たちに殺されたが、フリドウルファはその中にはいなかった。海外の山岳地帯にいまなお残る、巨人の集落に逃のがれたとも考えられる。「魔法生物飼育学」の授業での奇き行こうが何かを語っているとすれば、フリドウルファの息子は、母親の狂暴な性質を受け継いでいると言える。
運命のいたずらか、ハグリッドは、「例のあの人」を失しっ墜ついさせ、自分の母親を含む「例のあの人」の支持者たちを日陰の身に追いやった、あの男の子との親交を深めてきたとの評判である。おそらく、ハリー・ポッターは、巨大な友人に関する、不ふ愉ゆ快かいな真実を知らないのだろう――しかし、アルバス・ダンブルドアは、ハリー・ポッター、ならびにそのほかの生徒たちに、半巨人と交わることの危険性について警けい告こくする義務があることは明白だ。
記事を読み終えたハリーは、ロンを見上げた。ロンはポカンと口を開けていた。