「すぐだ。すぐだから!」ハリーは、バグマンが小鬼に向かってぶっきらぼうに言うのを聞いた。そして、バグマンは急いでハリーのほうにやってきた。少年のような笑顔が戻っていた。
「ハリー!」バグマンが声をかけた。「元気か? 君にばったり会えるといいと思っていたよ! すべて順調かね?」
「はい。ありがとうごさいます」ハリーが答えた。
「ちょっと、二人だけで話したいんだが、どうかね、ハリー?」バグマンが頼み込んだ。「君たち、お二人さん、ちょっとだけはずしてくれるかな?」
「あ――オッケー」ロンはそう言うと、ハーマイオニーと二人でテーブルを探しにいった。
バグマンは、マダム・ロスメルタからいちばん遠いカウンターの隅に、ハリーを引っ張っていった。
「さーて、ハリー、ホーンテールとの対決は見事だった。まずはもう一度おめでとうだ」バグマンが言った。「実にすばらしかった」
「ありがとうございます」
バグマンは祝いが言いたかったのではないと、ハリーにはわかった。そんなことだったら、ロンやハーマイオニーの前でもかまわないはずだ。しかし、バグマンはとくに急いで手の内を明かすような気配ではなかった。カウンターの奥の鏡をちらりと覗いて、小鬼を見ているようだ。小鬼は全員、目め尻じりの吊つり上がった暗い目で、黙だまってバグマンとハリーを見つめていた。
「まったく悪夢だ」ハリーが小鬼を見つめているのに気づいたバグマンが声をひそめて言った。
「連中の言葉ときたら、お粗末で……クィディッチ・ワールドカップでのブルガリア勢を思い出してしまうよ……しかしブルガリア勢のほうは、少なくともほかのヒト類にわかるような手話を使った。こいつらは、チンプンカンプンのゴブルディグック語でベラベラまくし立てる……わたしの知っているゴブルディグック語は『ブラドヴァック』の一語だけだ。『つるはし』だがね。連中の前でこの単語は使いたくない。脅迫きょうはくしていると思われると困るからね」
バグマンは低音の効いた声で短く笑った。